第9話 西原の恋に関する素朴な疑問

文字数 600文字

  俺は、ふとあることが気になって、西原に質問した。
お前、彼氏が初恋だって言ってたよな
うん
最初から、彼氏がゲイだってわかってたのか?
  バイトの面接に行って、緊張して具合が悪くなった西原を介抱してくれたのが、そこで働いていた今の恋人だったと聞いた。
わからなかったけど
けど?
そんなことは考えもしなかった
それくらい電撃的に恋に落ちたってこと?
そうなのかな
 うらやましい。うらやまし過ぎる。
それで、すぐに付き合うことになったのか?
うん
どんなふうに?
ほしがるね
いいから教えろよ
 前にも聞いたことがあるのだが、そこらへんのことはうやむやにして話してくれなかったのだ。
自分の感情にびっくりして、彼が用事を足している間に黙って帰っちゃったんだ。そうしたら、夜になって電話があって
それで?
すぐに彼のマンションに行って、その日のうちに愛し合った
 え……。それはつまり、したということか。
ずいぶん積極的だな

 それに急展開過ぎる。

 西原も西原だが、それを受け入れる彼氏もどうかと思う。西原の年上の恋人は、誠実そうで常識人に見えたが、それだけ西原が魅力的だったということか。

だって、彼は僕の運命の人だから
ふうん

 なんだか馬鹿馬鹿しくなって来た。俺は、ようやく一目ぼれした相手に彼女がいないと知っただけで、そこから一歩も進めていないというのに。

 

 ふと思う。進展しないのは、俺が門田にとって運命の相手ではないからだろうか……。

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