台湾と河村隆一

文字数 1,115文字

台湾は新北市の九份(フン)にたどり着き、提灯が美しい景色に魅せられる。
豎崎路の階段で暖かな提灯の光の下、彼女の笑顔を撮る。

料理屋に入り、芋圓というタロイモを白玉にしたスイーツをタピオカと共に食べる。
その後、夜市で牡蠣(かき)オムレツを食べてみたりする。
卵と牡蠣の組み合わせが実に面白い。

ブサ猫が角を生やした独特なキモかわいいキーホルダーを購入し、日本に帰ったら通学するカバンに着けてみたいと言う。

ホテルに入り、フロントでブロークン・イングリッシュでやり取りする。
302号室の北原とその友達の男ですとボクは話し、2人部屋に彼女と一緒に入る。
最初、別々の部屋にするつもりが笑可のリクエストで共に泊まることに。

彼女に聞くと、「ひとりぼっちでいると心が壊れそう。もう豹馬とはひたすら時を共有してるし、私はあなたのことを信用してる」と言うではないか。

完全にオフなノリの彼女は今回の旅行にはギターは持ってきていない。
その代わりトイピアノだけ持ってきていた。
事件後から不眠気味というか、夜ふかし癖が付いた笑可はボクより夜遅くまで起きてる。
ボクはというと、飛行機で緊張しすぎてあまり寝ていないので睡魔がヤバい。

「おやすみ」とダブルベッドに入り、眠ろうとすると笑可は短くトイピアノで癒されるメロディを弾いた。
そして「また明日ね」と返してきた。
いつ、彼女がこのベッドに入ってくるのか。
部屋にはダブルベッドしか寝具は無い。

寝つけずにいると、3月下旬の寒さにやられた彼女が
もう寝てるよね? と一人言を言いつつベッドに入ってきた。
彼女がボクを信用してくれていることが嬉しくて、笑可が寝れることを祈りながら一足早く夢の世界へ旅立った。

「不思議な夢を見たの。豹馬と2人で木漏れ日の庭であなたが河村隆一さんばりにねっとりした歌声でI Love Youを歌う姿を」
朝目が覚めて時刻を確認してると9時頃。
彼女はそんな夢の感想を言ったので、「あなたうぉー、だきしめてぇええん、このむねをぉお!はなさなぁいいぃ!んふぅふぅー」と彼のモノマネをした。

「おちょくってんの?」と冷静に笑った声でキレられる。
「隆一さんの歌い方をマネしただけだよ」
「なんかヴィジュアル系の人って独特な歌い方するよね。ペニシリンのボーカルもそうだし」

「河村隆一さんで思い出したけど、たむちゅーぶ思い出したわ」
「あー、モノマネがスゴすぎる人だよね。相当何百回も河村さんの歌聴き込んでないとできないから私にはムリな次元すぎて、尊敬してるよ」

2人してどちらが河村隆一さんのあのねちっこくて、異様に頭に残る歌い方をマネれるか勝負したりして
ムダに夕方まで時間を過ごした。
台湾まで来たのに、何やってんだろ。
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登場人物紹介

豹馬。

17歳。

高校生で、幼なじみの笑可が性被害に遭ったことを知り彼女の力になりたいと思う。

どこまでも笑可のことが気がかり。

自傷癖ができた彼女を心配している。

笑可。

16歳の早生まれ。

夜12時にコンビニへジュースを買いに

行こうとしたところ、性的暴行の被害に遭う。

唯一心を開ける幼なじみの豹馬に少しずつ心を開いていく。

ある邦ロックバンドのカナリアボックスを愛聴し始める。

山沢さん。

本名は山沢 正之。

シングルマザーや毒親育ち、性被害に遭った女性に対してシリアスなメッセージソングを

作ることを生きがいにしている。

さだまさしに強く憧れている。

作者がモデル。

高崎玖蘭。

24歳。19歳の頃に予備校の帰りに

ヘルメットをかぶった男にスタンガンで襲われ、性的暴行を受ける。

2年ひきこもった後、幼少期の夢であったミュージシャンになるべく過去をさらけ出し、ストリートミュージシャンからプロになった女性SSWから音楽理論を学び、無事プロになる。


笑可の音楽的パートナーへと関係が変わっていく。

彩風。

29歳のシングルマザー。

2、3歳くらいの娘を持つ。

山沢さんの人間性に惚れ、彼のパートナーになる。

性被害に遭った過去を持つ。

バンドではキーボードを知り合いなどと交代でやったりする。

沙璃奈(20)。

豹馬のバイト先の先輩でベースが上手すぎる。

尊敬するベーシストは亀田誠治と

田淵智也。

ルミ。

初期から笑可のファンでいる女の子。

15歳、性被害を受けたばかりな時に笑可に会いたいとXで彼女のアカウントにリプを飛ばし笑可が豹馬に付き添われつつ会う。


再会した時に思わぬ出来事が……

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