第62話

文字数 875文字

季節は流れ、高校卒業をしたボクはお笑いの養成所に笑可は美術系の専門学校に進学していた。
1stアルバムの順位はオリコン5位だった。

目立ったタイアップ(ドラマの主題歌)などはあまり無いものの、玖蘭さん同様に性被害の過去から立ち上がったシンガーソングライターとして評価も名声も作りつつあった。

トークの上手いミュージシャンがライブのMCにそこそこ時間を割くように、最近はボクの1人コントがライブの4分の1を占めるようになってた。
ゴー☆ジャスさんのモノマネばかりしていたら、サプライズ感覚で「僕、マダカスカル!」と後ろから本物が出てきた時はモノマネ芸人が本物に気付いて驚くソレを味わった気分になった。

バンド編成にも少し変化が出てきていた。
彩風さんが山沢さんとの子どもを授かり、産休のためにサポートキーボーディストとして浅倉大介や小室哲哉に影響を受けた麻水大哲が加わった。

また、山沢さんも彩風さんを子どもが産まれてくるまで、また産まれてきてからも彼女のそばにいたいという理由で彼と仲のいいボカロPのこねこちゃんPこと十月いみりが加入した。
21歳のいみりさんと24の大哲さんは打ち上げの席で一緒に酒を飲むなど、恋の予感がしていた。

最近はお互いの猫を訪問させ合い、仲良くさせるなどいみり大哲コンビは相当仲がいい。
ライブではドラムも叩けるといういみりさんが叩きながら歌うか、打ち込みのアレンジを入れても違和感ない歌はライブアレンジとして笑可の曲に逆再生したピアノ音や、エレクトロニカなリズムを足したりしていた。

お笑い好きないみりさんをライブのコントでイジリ、名門大学卒の彼女は頭のいい切り返しをしてくる。

だいぶ笑可のバックバンドのメンバー構成も変わったものだ。
このまま山沢さんは戻ってこないつもりなのだろうか。
でも長年モテなかった(約14年)彼がようやく女性と結婚まで行きそうなのは素直にめでたい気がする。

笑可はすっかり大人びた見た目に変わってきてる。
そいえば、笑可との1ヶ月ぶりのデートが明日あるんだった。
こういう時、ダブルブッキングをかます馬鹿ではない。
楽しみだ。
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登場人物紹介

豹馬。

17歳。

高校生で、幼なじみの笑可が性被害に遭ったことを知り彼女の力になりたいと思う。

どこまでも笑可のことが気がかり。

自傷癖ができた彼女を心配している。

笑可。

16歳の早生まれ。

夜12時にコンビニへジュースを買いに

行こうとしたところ、性的暴行の被害に遭う。

唯一心を開ける幼なじみの豹馬に少しずつ心を開いていく。

ある邦ロックバンドのカナリアボックスを愛聴し始める。

山沢さん。

本名は山沢 正之。

シングルマザーや毒親育ち、性被害に遭った女性に対してシリアスなメッセージソングを

作ることを生きがいにしている。

さだまさしに強く憧れている。

作者がモデル。

高崎玖蘭。

24歳。19歳の頃に予備校の帰りに

ヘルメットをかぶった男にスタンガンで襲われ、性的暴行を受ける。

2年ひきこもった後、幼少期の夢であったミュージシャンになるべく過去をさらけ出し、ストリートミュージシャンからプロになった女性SSWから音楽理論を学び、無事プロになる。


笑可の音楽的パートナーへと関係が変わっていく。

彩風。

29歳のシングルマザー。

2、3歳くらいの娘を持つ。

山沢さんの人間性に惚れ、彼のパートナーになる。

性被害に遭った過去を持つ。

バンドではキーボードを知り合いなどと交代でやったりする。

沙璃奈(20)。

豹馬のバイト先の先輩でベースが上手すぎる。

尊敬するベーシストは亀田誠治と

田淵智也。

ルミ。

初期から笑可のファンでいる女の子。

15歳、性被害を受けたばかりな時に笑可に会いたいとXで彼女のアカウントにリプを飛ばし笑可が豹馬に付き添われつつ会う。


再会した時に思わぬ出来事が……

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