KANPAI FUNK
文字数 1,854文字
ビクタースタジオで緊張しながら、1番本格的なスタジオだなあとしみじみ思いながらデビューシングルの音源を録った。
1曲目に家族の詩、2曲目には玖蘭さん書き下ろしの新曲『止めないでハートビート』、3曲目にユニコーンのスプリングマンのテーマをボクは悪戦苦闘しつつ、猛練習したベースで比較的シンプルな家族の詩だけは細かいベースラインを奏でることに成功した。
他はルート音を弾くルート弾きで乗り切った。
ジャケットは笑可の自然体な顔を撮影することに決まっていた。
MVはというと、ファンから募るべく#家族の詩歌続のタグでXに投稿した方をなるべく採用するという方向で行こうという話になった。
万事快調であった。
季節は5月。
CDが出るのは7月。
地方のローカルテレビ局の番組のタイアップが付くとのことだった。
初回限定盤には湯呑みをつけたい。
そう笑可が言い出した。
「本当はお父さんかお母さんって書いてある湯呑みがいいけど、好きですとかにすると誰にでも渡せるからいいかも」
スタッフは名案だと判断し、付けることになった。
山沢さんは3曲のリズムトラックの打ち込みを担当している。
また、2曲目の玖蘭さん提供曲は彼女たちのツアーのバックバンドが演奏を担当した。
歴戦練磨のスタジオミュージシャンによって構成された楽器隊はハンパなく上手かった。
レコーディングも終わり、すっかり手持ち無沙汰な笑可はボクらを呼び1人で家でご飯を食べるのもさみしいからとファミレスに誘ってきた。
「はあ、タバコ吸えないのもどかしいけどメンバー内で吸うのボクだけだしな」
ほうれん草の炒めたのを食べつつ、山沢さんが言う。
「3曲はキツくて、スプリングマンのテーマは豊橋みつかって私の知り合いのキーボーディストにバトンタッチしたけどよかった?」
「とてもいい人でした。あと、ユニコーンのファンの方と遠隔でセッションして、後日ギターソロを弾いてもらったのがいい思い出です」
「美味いよ、イカスミパスタ。笑可も食べてみ」
ボクは彼女の前へパスタを乗せたフォークを持っていく。
「ん。おいしい」
口元を黒く汚しながら、彼女はにっこり微笑んだ。
「年内にはフルアルバム出したいよね」
「うん。ベースどうしよう」
「豹馬の負担を減らすためにも、半数以上の歌をビクターの方に用意してもらうつもり」
「それは助かる。バイトと学業と音楽両立させられる自信あんまり無かったから」
ヒロくんのあだ名で有名な100sに参加していた一流のベーシストを最初のアルバムに呼ぶつもりだったらしかった。
小谷美紗子さんなどと音楽活動を共にしていたり、山沢さん経由で好きになった中村一義のバンド100sでの姿が大きな決め手らしく。
「あと、ギタリストも地味に足りない。3曲はいてほしい。誰にラブコール送ればいいのか」
「それなら高野寛さんにダメ元でオファー出してみよう」
「山沢さん好きですもんね」
「いじめっ子の名字が彼と同じで、そんなことから曲も聴かずに毛嫌いしていてある日ベステンダンクを聴いたらこんないい曲聴かないでいたなんて、って思ったんだよ」
山沢さんがぶっちゃけた。
「あとレコード会社がOK出すか知らないけど、リミックス聴くの好きだからPARKGOLFさんとダメ元でtofubeatsさんにオファー出してみる。アルバム出した後に彼らに良いと思った歌を聴いた上で」
PARKGOLFさんとはゲスの極み乙女の私以外私じゃないののリミックスや神聖かまってちゃんのの子をゲストボーカルに呼んだtofubeatsさんのおしえて検索のリミックスを担当した、敏腕リミキサーだ。
チルいしノレる。
そんなリミックスを作る人だ。
「学校行かない分、ヒマでひたすら音楽YouTubeで聴いたり広告ウザイからサブスクで気に入った歌とかはDLで買ってたけど、サカナクションの影響で色々なリミキサーのリミックス聴くようになったの」
「へえ、好きなリミキサーは?」
山沢さんが興味ありげに聞く。
「砂原良徳さんやピチカート・ファイヴの小西康陽さんやFPMですかね」
「まりん好きとかセンスあるじゃん」
電気グルーヴ好きな山沢さんが嬉しげに言う。
「笑可ちゃん、最初に会った時よりイキイキしてる」
彩風さんがふとつぶやいた。
確かに彼女は半年前より外出しても気分が悪くなったりしなくなってきている。
「初ライブをした後からだんだん体調を崩さなくなってきました」
「よかったよ、本当に」
ボクがそう言うと笑可は嬉し泣きし始めてしまった。
今は膨らむ夢に心も体も追いついてきた笑可に祝杯をあげよう。
1曲目に家族の詩、2曲目には玖蘭さん書き下ろしの新曲『止めないでハートビート』、3曲目にユニコーンのスプリングマンのテーマをボクは悪戦苦闘しつつ、猛練習したベースで比較的シンプルな家族の詩だけは細かいベースラインを奏でることに成功した。
他はルート音を弾くルート弾きで乗り切った。
ジャケットは笑可の自然体な顔を撮影することに決まっていた。
MVはというと、ファンから募るべく#家族の詩歌続のタグでXに投稿した方をなるべく採用するという方向で行こうという話になった。
万事快調であった。
季節は5月。
CDが出るのは7月。
地方のローカルテレビ局の番組のタイアップが付くとのことだった。
初回限定盤には湯呑みをつけたい。
そう笑可が言い出した。
「本当はお父さんかお母さんって書いてある湯呑みがいいけど、好きですとかにすると誰にでも渡せるからいいかも」
スタッフは名案だと判断し、付けることになった。
山沢さんは3曲のリズムトラックの打ち込みを担当している。
また、2曲目の玖蘭さん提供曲は彼女たちのツアーのバックバンドが演奏を担当した。
歴戦練磨のスタジオミュージシャンによって構成された楽器隊はハンパなく上手かった。
レコーディングも終わり、すっかり手持ち無沙汰な笑可はボクらを呼び1人で家でご飯を食べるのもさみしいからとファミレスに誘ってきた。
「はあ、タバコ吸えないのもどかしいけどメンバー内で吸うのボクだけだしな」
ほうれん草の炒めたのを食べつつ、山沢さんが言う。
「3曲はキツくて、スプリングマンのテーマは豊橋みつかって私の知り合いのキーボーディストにバトンタッチしたけどよかった?」
「とてもいい人でした。あと、ユニコーンのファンの方と遠隔でセッションして、後日ギターソロを弾いてもらったのがいい思い出です」
「美味いよ、イカスミパスタ。笑可も食べてみ」
ボクは彼女の前へパスタを乗せたフォークを持っていく。
「ん。おいしい」
口元を黒く汚しながら、彼女はにっこり微笑んだ。
「年内にはフルアルバム出したいよね」
「うん。ベースどうしよう」
「豹馬の負担を減らすためにも、半数以上の歌をビクターの方に用意してもらうつもり」
「それは助かる。バイトと学業と音楽両立させられる自信あんまり無かったから」
ヒロくんのあだ名で有名な100sに参加していた一流のベーシストを最初のアルバムに呼ぶつもりだったらしかった。
小谷美紗子さんなどと音楽活動を共にしていたり、山沢さん経由で好きになった中村一義のバンド100sでの姿が大きな決め手らしく。
「あと、ギタリストも地味に足りない。3曲はいてほしい。誰にラブコール送ればいいのか」
「それなら高野寛さんにダメ元でオファー出してみよう」
「山沢さん好きですもんね」
「いじめっ子の名字が彼と同じで、そんなことから曲も聴かずに毛嫌いしていてある日ベステンダンクを聴いたらこんないい曲聴かないでいたなんて、って思ったんだよ」
山沢さんがぶっちゃけた。
「あとレコード会社がOK出すか知らないけど、リミックス聴くの好きだからPARKGOLFさんとダメ元でtofubeatsさんにオファー出してみる。アルバム出した後に彼らに良いと思った歌を聴いた上で」
PARKGOLFさんとはゲスの極み乙女の私以外私じゃないののリミックスや神聖かまってちゃんのの子をゲストボーカルに呼んだtofubeatsさんのおしえて検索のリミックスを担当した、敏腕リミキサーだ。
チルいしノレる。
そんなリミックスを作る人だ。
「学校行かない分、ヒマでひたすら音楽YouTubeで聴いたり広告ウザイからサブスクで気に入った歌とかはDLで買ってたけど、サカナクションの影響で色々なリミキサーのリミックス聴くようになったの」
「へえ、好きなリミキサーは?」
山沢さんが興味ありげに聞く。
「砂原良徳さんやピチカート・ファイヴの小西康陽さんやFPMですかね」
「まりん好きとかセンスあるじゃん」
電気グルーヴ好きな山沢さんが嬉しげに言う。
「笑可ちゃん、最初に会った時よりイキイキしてる」
彩風さんがふとつぶやいた。
確かに彼女は半年前より外出しても気分が悪くなったりしなくなってきている。
「初ライブをした後からだんだん体調を崩さなくなってきました」
「よかったよ、本当に」
ボクがそう言うと笑可は嬉し泣きし始めてしまった。
今は膨らむ夢に心も体も追いついてきた笑可に祝杯をあげよう。