第65話
文字数 1,882文字
「ふぅん。そうなんだ。笑可ちゃんはよく性のトラウマ超えて豹馬くんとHできたね」
まだ19なボクはシラフでは話せないと思って、どうせ居酒屋の店員にはバレないからいいだろうってことでビール3杯、レモンサワー2杯を注文してそれらを片付けて玖蘭さんに包み隠さず性事情も含めて伝えた。
「はい、豹馬くんとは何とか恋人同士の行為がしたくて……。これで豹馬くんとヤらないまま別れたらどこか後悔する気がしたんです」
「どうりで、最近笑可のツイートや作るデモ曲の内容が恋愛感に染まってると思った。
まあ、後輩が幸せそうで何よりだよ」
「玖蘭さんはパートナーいるんですか?」
笑可があえて質問をした。
「私か? …そうさねぇ、異性の恋人を作った頃もあったけど体の関係は結べずに終わったよ。
どうしてもセックスしようと裸になって、男の人のソレを見ると消したい過去が蘇って吐いたりしてしまって、それどころじゃなくなるんだ。
私だってしっかり世間一般のカップルみたいにHがしたい。私を求めてくれてるのに、応えられないなんて悲しくてやりきれない。
1人で眠る時、誰かの体温で眠りたい夜がある。
辛い時、マネージャーとかじゃなくて私を包み込んでくれる存在がいてほしい。
音楽を作ってる時に、どんなレベルの物でも何も考えずに頑張ったねと褒めてくれる人とか最高だなって思う」
玖蘭さんはそこまでまくし立てると、やり場のない感情を晴らすかのように酒をあおった。
「それじゃ、うちの豹馬で練習してみます?」
「どういうこと?」
笑可は驚きの提案をした。
一日だけボクと玖蘭さんが街をデートして、性行為をイメージしたセリフのやりとりをして少しでも克服できたら…ということだった。
「それ、いいね」
玖蘭さんが乗っかった。
「マ、マジですか!?」
「私とじゃイヤなのー?」
すっかり酔った玖蘭さんは普段とは考えられない無邪気な笑みで言ってくる。
「イ、イヤじゃないですけど」
「じゃあ決まり!」
よくわからないことになってしまった。
3日後。
玖蘭さんは偶然空いていたスケジュールを利用して、横浜の街で待ち合わせた。
「お待たせー」
横浜駅東口ポルタ近くで銀髪のボブの女性に突然声をかけられ、キョトンとしているとその子が変装した玖蘭さんだとややあって気付いた。
「どこに行く?」
「玖蘭さんはどこ行きたいんですか?」
「ふふ、豹馬くんに合わせるよ。私相手に合わせる方なんだ」
なんだか意外だった。
彼女の手を握ってはやりすぎな気がして、繋ぎはせずに横浜のLoftまで行くことに。
入浴剤のコーナーでかわいい動物のマスコットが入った商品に見とれる玖蘭さん。
「かわいい、コレ。黒猫のマスコットが付いてくるのいいな」
髪色もそうだけど、左目に緑のカラコン、右目に紫のカラコンを入れた玖蘭さんはもはや別人だった。
「私、色んな色のペンで用件の種類や優先順位ごとにペンを使い分けてるけど豹馬くんはやらないの?」
「工夫してるんですね」
「例えば赤が緊急性のあるもので、そうだね…恋人がいた頃はデートの日時を銀のペンで書いてたな」
「銀好きなんですか」
「ふふ。今まで2人の男性としか付き合ったことないけど彼氏とお泊まりデートする時は銀のネイルで気合い入れてたくらい」
できれば近いうちに玖蘭さんが銀のペンを使う機会が来て欲しいものだ。
「今から私を笑可ちゃんだと思って口説いてみてよ 」
「あぁあぁぁぁん! ほぉおおおんほおおん! んふぅぅぅふううん! わたしぃおぉん! どこまでもてらせぇぇん!」
「今のは私のオリジナル曲だけど、その歌い方は?」
「河村隆一さんを意識してアレンジしました」
「そっか。そんなふうに笑可ちゃんが落ち込んだ時は励ましてるんだね」
「はい。玖蘭さんは音楽に真剣に取り組んでるところ、カッコイイです。声も髪型もかわいいし、歌声は凛としてて、甘い歌声も出せるし、幅広いです」
「……そこそこ、ドキッとしちゃった。笑可ちゃんと破局したら私が豹馬くん狙っちゃおうかな」
「え、」
「ふふ、ウッソー」
小悪魔的な笑顔で否定する玖蘭さん。
笑ったまま「横浜の地下街って豚骨ラーメン屋そこそこあるし、寄ろっか」と言った。
「おいしかったよね」
「はい」
「今日は楽しかった。別れる前にその前に」
「なんですか?」
コツンと玖蘭さんは額(ひたい)をボクの額にコツンと当てて、「笑可ちゃんを幸せにね。あー、そろそろ本当に彼氏ほしくなってきた」とささやいた。
最後にボクから握手を求めた。
すると、にっこり微笑んで「私のCD5枚は買ってくれよな」と言いつつ手を握ってきた。
なぜか楽器の腕が少し上がりそうな気がした。
まだ19なボクはシラフでは話せないと思って、どうせ居酒屋の店員にはバレないからいいだろうってことでビール3杯、レモンサワー2杯を注文してそれらを片付けて玖蘭さんに包み隠さず性事情も含めて伝えた。
「はい、豹馬くんとは何とか恋人同士の行為がしたくて……。これで豹馬くんとヤらないまま別れたらどこか後悔する気がしたんです」
「どうりで、最近笑可のツイートや作るデモ曲の内容が恋愛感に染まってると思った。
まあ、後輩が幸せそうで何よりだよ」
「玖蘭さんはパートナーいるんですか?」
笑可があえて質問をした。
「私か? …そうさねぇ、異性の恋人を作った頃もあったけど体の関係は結べずに終わったよ。
どうしてもセックスしようと裸になって、男の人のソレを見ると消したい過去が蘇って吐いたりしてしまって、それどころじゃなくなるんだ。
私だってしっかり世間一般のカップルみたいにHがしたい。私を求めてくれてるのに、応えられないなんて悲しくてやりきれない。
1人で眠る時、誰かの体温で眠りたい夜がある。
辛い時、マネージャーとかじゃなくて私を包み込んでくれる存在がいてほしい。
音楽を作ってる時に、どんなレベルの物でも何も考えずに頑張ったねと褒めてくれる人とか最高だなって思う」
玖蘭さんはそこまでまくし立てると、やり場のない感情を晴らすかのように酒をあおった。
「それじゃ、うちの豹馬で練習してみます?」
「どういうこと?」
笑可は驚きの提案をした。
一日だけボクと玖蘭さんが街をデートして、性行為をイメージしたセリフのやりとりをして少しでも克服できたら…ということだった。
「それ、いいね」
玖蘭さんが乗っかった。
「マ、マジですか!?」
「私とじゃイヤなのー?」
すっかり酔った玖蘭さんは普段とは考えられない無邪気な笑みで言ってくる。
「イ、イヤじゃないですけど」
「じゃあ決まり!」
よくわからないことになってしまった。
3日後。
玖蘭さんは偶然空いていたスケジュールを利用して、横浜の街で待ち合わせた。
「お待たせー」
横浜駅東口ポルタ近くで銀髪のボブの女性に突然声をかけられ、キョトンとしているとその子が変装した玖蘭さんだとややあって気付いた。
「どこに行く?」
「玖蘭さんはどこ行きたいんですか?」
「ふふ、豹馬くんに合わせるよ。私相手に合わせる方なんだ」
なんだか意外だった。
彼女の手を握ってはやりすぎな気がして、繋ぎはせずに横浜のLoftまで行くことに。
入浴剤のコーナーでかわいい動物のマスコットが入った商品に見とれる玖蘭さん。
「かわいい、コレ。黒猫のマスコットが付いてくるのいいな」
髪色もそうだけど、左目に緑のカラコン、右目に紫のカラコンを入れた玖蘭さんはもはや別人だった。
「私、色んな色のペンで用件の種類や優先順位ごとにペンを使い分けてるけど豹馬くんはやらないの?」
「工夫してるんですね」
「例えば赤が緊急性のあるもので、そうだね…恋人がいた頃はデートの日時を銀のペンで書いてたな」
「銀好きなんですか」
「ふふ。今まで2人の男性としか付き合ったことないけど彼氏とお泊まりデートする時は銀のネイルで気合い入れてたくらい」
できれば近いうちに玖蘭さんが銀のペンを使う機会が来て欲しいものだ。
「今から私を笑可ちゃんだと思って口説いてみてよ 」
「あぁあぁぁぁん! ほぉおおおんほおおん! んふぅぅぅふううん! わたしぃおぉん! どこまでもてらせぇぇん!」
「今のは私のオリジナル曲だけど、その歌い方は?」
「河村隆一さんを意識してアレンジしました」
「そっか。そんなふうに笑可ちゃんが落ち込んだ時は励ましてるんだね」
「はい。玖蘭さんは音楽に真剣に取り組んでるところ、カッコイイです。声も髪型もかわいいし、歌声は凛としてて、甘い歌声も出せるし、幅広いです」
「……そこそこ、ドキッとしちゃった。笑可ちゃんと破局したら私が豹馬くん狙っちゃおうかな」
「え、」
「ふふ、ウッソー」
小悪魔的な笑顔で否定する玖蘭さん。
笑ったまま「横浜の地下街って豚骨ラーメン屋そこそこあるし、寄ろっか」と言った。
「おいしかったよね」
「はい」
「今日は楽しかった。別れる前にその前に」
「なんですか?」
コツンと玖蘭さんは額(ひたい)をボクの額にコツンと当てて、「笑可ちゃんを幸せにね。あー、そろそろ本当に彼氏ほしくなってきた」とささやいた。
最後にボクから握手を求めた。
すると、にっこり微笑んで「私のCD5枚は買ってくれよな」と言いつつ手を握ってきた。
なぜか楽器の腕が少し上がりそうな気がした。