第14話 聞いて、訪ねて、協力する

文字数 2,040文字

2人で1つのカミは、どちらか1つが欠けると不安定になりやすい。
今まで何ごとも無かったのは、ここが人が滅多に入らない場所だったからだ。
フタリカミがいる所は、本来人は入ってはいけないのだ。

「どこだ、どこだ、私のハジマリノキミはどこだ。」

「まって、アジロノカミ、僕がヨカゼの兄弟に聞いて来る。
もうそろそろ何人かは出てきてると思うんだ。」

ユラギカゼがふわりと舞い上がり、ヤマから吹き下ろすヨカゼの兄弟の元へと飛んで行く。

「兄様!ヨカゼの兄様!」

夕方の穏やかなお日様の下で、何人かのヨカゼが飛び始めている。
懸命に手を上げて、声を上げると気がついてくれた。

「おや、ユラギカゼじゃないか。どうしたんだい?」

「あの崩れた所のハジマリノカワのカミを探しているんだ。
夜、ピカピカ光るイシがあるって聞いたんだけど、知らない?」

「ピカピカ?」

「ピカピカか……
僕が見たのがそれだといいけど、確か、あの崩れた所のあのあたり……
ほら、ぽつんと1本残った木が斜めになって残ってるだろう?あの木に引っかかるように根本に光る物があったよ。」

「ありがとう!兄様!」

「ユラギカゼ、よくない物にかかわっちゃいけないよ。
お前はまだ子供なんだ、すぐに消えてしまう。」

「はい!わかりました!」

ユラギカゼは、ゆらゆらと下へと降りて行く。

「返事はいいんだけど」

「あの子、ヒトを大好きだったのに、イタミビトの事でずいぶん傷ついたようだよ。」

「そう、消えてしまわないといいんだけど。優しい子だよ」

「そうだね」



クロさんの背中をめがけて降りて行く。
ピュウッと風が吹いて、少し流された。
クロさんがちょっと走って、僕を追いかけてくる。
クルリと宙で回って、ストンと背に降りた。

「クロさんありがとう!」

「うむ」

タタッとクロさんは、カゼのように走って戻る。
待ちかねたようにアジロノカミが頭を上げて、覆い被さってきた。

「どこだ、どこだ、どこだ。」

「向こうの崩れた所の始まりだよ。行ける?」

「行く」

水の芋虫は、また身体の中の水を音を立ててグルグル回し、移動しはじめた。

「これじゃあ、日が暮れちゃう。」
「あたしたち、眠くなっちゃう」
「よね」

最初ゆっくりだった水の芋虫にコマドリノカミがぼやきはじめたけど、自分でももどかしいのかだんだん芋虫の形が崩れ、水の身体から沢山の手が生えて、いびつな巨大なクモになった。
バシャンバシャンと巨大な水風船の腹を揺らし、怖いくらいの早さで、木に体当たりしては突き抜けて通り過ぎて行く。

やがて崩れた場所に着くと、アジロノカミは気がつかずに通り過ぎてしまった。

ドスドスドスバシャンバシャンバシャン

「アジロノカミ!ここだよ!」

ドズン!

言われてストップした弾みで、森の中に突っ伏した。
すると、形が変わり前後が逆になる。
ぐぐっと身体を持ち上げ、ユラギカゼのあとをついていった。

薄暗くなってきた森の中で、コマドリノカミも巣に戻らず付き合ってくれる。
飛ぶとミミズクノカミに捕まるかもしれないので、ユラギカゼの肩に止まった。

「どこだろ、ピカーッと光ってるわけじゃないんだね。
コマドリノカミは見える?夜は駄目なんでしょ?」

「見えるわよ、これでもカミだもの。」
「カミパワーで見てるわ。」

アジロノカミの地響きで、ガラガラ音が聞こえる。
また少し動いたのかもしれない。

「手分けして探す?」

「まって!ミミズクノカミの気配がするわ!」
「ユラギカゼじゃ、守りにならないわ。」
「クロさんの毛に隠れるのよ!」

3羽で首のもふもふの毛に潜り込んで隠れた。
次の瞬間、鋭い爪がユラギカゼの頭を通り抜けた。

バサバサバサッ!

「ちぇっ!逃げられた。」

頭の上の木に、ミミズクノカミが降りてきた。

「キャー」「キャー」「キャー」

ユラギカゼが、ビックリして木をあおぐ。

「なんで?コマドリノカミを食べようとするの?!」

「はっ、俺達に取っちゃ小さい生き物はみんな得物さ。
それに、カミを食えば神気が上がるからね。」

「僕ら、ハレニギノカミを探してるんだ。頼むから諦めてくれないかい?」

「ハレニギノ?なんだ、ミズノカミを探してるのか。
それで日が沈むのにうろついてるんだな。
わかった、俺も手を貸すぜ。何を探してるんだ?」

「キラキラ光るイシさ。
アジロノカミがね、アジロノハジマリノキミを探してるんだけどさ、ちょっとね。」

「なるほど、あれか。あれ、マズいんじゃないの?
あんな奇妙な形を取るカミなんて見たことが無いよ。オソガミになりかけてる。」

「だから、アジロノハジマリノキミも探してるんだよ。一緒に探してよ。」

「わかった。でも僕は縄張りから出られないからね。それで良ければ。」

「うん、心強いよ、ありがとう!」

食おうとしたのに、そんな事言われて照れる。

「お前いい奴だな、まかせろ!って言いたくなるぜ。隣の縄張りにも伝えてやらあ。
オソガミ出たらこっちも巻き添えだ。
この間、ちょっとまた崩れたんだ。土に隠れてないといいけどな。」

そう言って、気恥ずかしそうに手を上げると、ミミズクノカミは飛び立っていった。
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