第2話 ヤマミズノカミとハジマリノキミ (ア)

文字数 962文字

僕は水を生む出す、ヤマミズノカミと言われる、カワノモトだ。
ハレニギノヤマミズノカミと言う名が付いている。
僕はカワノハジマリである、ハジマリノキミと連れ添って生きている。

僕は人間が嫌いだ。
人間は、大嫌いだ。

僕は森の中で水を生み出す。
水は僕の命、水は僕の泉から僕の大切なハジマリノキミへと流れて溶け合い下流に流れて川になる。
ハジマリノキミは常に僕の側にいて、たとえ僕が位置を変えたとしても、彼は必ず僕に寄り添ってくる。僕らはずっと一緒だ。
美しく輝くキミと2人で静かな森で語らい、小さな水音に耳を傾ける。
静かで、友達のカミに囲まれ、生き物を愛して育み、緑に包まれて森はとても豊かだった。


僕はハジマリノキミ、カワノハジマリ。
僕はヤマミズノカミに常に寄り添い、水で溶け合う2人で1つのカミ。
ハレニギノハジマリノキミと言う名が付いている。

彼は人間が嫌いだ。
でもね、僕は人間は以外と悪くないと思うよ。
時々、人間が生き物を取りに来るんだ。
イヤだなと思ってたけど、その表情は豊かで、生き生きしてるんだ。

僕はハジマリノキミでも小さい方だ。
でも、長く今の場所に留まって、生き物が沢山住んでいる。
僕の穏やかな流れが、生き物たちは気に入ってくれるらしい。
先日カワズノカミ(かえるのかみ)が、今年も子供たちがお世話になるよと挨拶に来た。
最近、人間がカワから水路を引いて水を奪うので、ここは豊かでいいねとカミはぼやいていたけど、僕はこう思うんだ。

「僕らは人間と共生するべきだと思うんだ。」

水草の中で抱き合っているとき僕がそう言うと、僕を抱いていたヤマミズノカミがブクブク水を吐き出して大きくため息を付く。

「ほんと、キミは優しすぎるよ。
そんな事言ってると、イタミビトに掘り返されちゃうよ?」

不機嫌な声で、本当にひどいことを言うんだ。
人間のイタミビトは、カミを知らないもっとも恐ろしい者達だ。
考えただけで身震いする。

「もう!」

僕は水に溶けて、そのまま下流へと見回りに行った。


また、人間の影が幾つもうごめくのが見える。
滅多に人間の姿なんか見なかったのに、ある日を境になぜか頻繁に人間を見かけるようになっていった。
時々、遠くの木のカミの悲鳴が響きはじめ、不安だったけどトリノカミの友達はここまでは来ないよと、僕らを慰める。
どうにも出来ないもどかしさに、不安だけが広まっていった。
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