第5話:不景気の洗礼と退職勧告で辞職へ

文字数 2,370文字

 世田谷マダムのテニスクラブへ行くと一番、仲の良かった池上さんの家に行くと玄関や窓が閉められていた。隣の方に聞くと、何でも売り出しみたいと教えられた。でも、まだ売れてない様ですと言われた。

 その足で池辺さんのお宅を訪ねると池上さんは以前、銀座で有名な天ぷら屋を旦那さんが経営していたが2年前から客足が減った。そこで1年前、店を売り出しが、まだ売れてない見たいと告げられた。借金も多いのか誰にも言わずに田園調布の家も売りに出して出て言った。

 そんな訳で行方不明。テニスクラブは活動停止。お茶を入れ替えて池上さんの事は悪い言いたくないけれど実は世田谷テニスクラブの会費を持ち逃げし私が100万円立て替えたのよと打ち明けた。

 新しく入った方々は若い人達で話が合わなく、噂では、腰が軽くてテニスクラブのコーチのアバンチュールを過ごしているという噂も出ていると聞いて田園調布テニスクラブの活動をやめたと言った。何せ、今、世の中、冬の時代、じっと絶えるしかないわねと笑った。

 池田さんも大変でしょと同情する始末。世田谷営業所へ帰ると東京営業部の鮫島部長から電話があったと聞かされた。部長に電話を入れると世田谷営業所の交際費が多すぎると経理から言われて困っていると言われた。

 このまま世田谷営業所の数字が上がらないと経理部から怒鳴られると言った。しかし今までの付き合いは切れないし困り果てた。来週水曜日に真田課長と今井課長と3人で会議を開き打開策を考えた。しかし交際費を減らすと、お客さんとのパイプを切れると池田が断言。

 すると今井課長が池田所長が交際費を使ってでも業績を上げろと言われて仕方なく交際費を使ったのに急にやめろとはどういう事と怒り始めた。以前の清水良助所長の時はN保険の保険は保証も充実している。今までの歴史もあるので自信を持って説明して、お客さんに奨めろと教えられた。

 小手先を使う様な営業は、いつまでも続かないからするなと言われてきた。その度、池田所長になって逆の事を言われ、この結果じゃないですか。もう池田所長にはついて行けないという始末だった。そこで関係を切れない先には池田所長がついて謝りに行くといった。

 いくら上司でも、お客さんにとっては他人、そんな人の言う事を聞く訳ないと今井課長が大きな声で言った。それに対し池田所長が気持ちは、わかるが誠心誠意、話せば、わかってくれると答えた。そんな営業は時代遅れだとどなった。さすがに、この話を聞いた真田課長が、それは言い過ぎだ、

 池田所長が来て業績が上がり、多くのボーナスと多額の報奨金をもらったと反論した。今井が、やはり以前の清水良助所長の言っていた営業方法のが正解とつぶやいた。これを聞いて池田所長がこんな堂々巡りの話しも解決にはならない。何とか新規契約をとれる先を増やして挽回するしかないと告げた。

 今井が交際費なしで新規契約はとれない。何言ってんですかと反論。話を聞いた真田課長がこんな議論に時間を費やしても業績改善にならない外勤して減少をを食い止めましょ。それしかないですよと、あきらめ気味に言った。じゃー外勤に出かけますと言い席を立った。

池田所長は済まないが宜しく頼むと頭を下げると真田課長が今井所長や世田谷営業所や会社のためじゃない。自分の家族、給料のために頑張るのですと言って営業所を出て行った。しかし4月になっても5月になっても業績の回復の兆しさえ見えてこない。

 6月には会社内で早期退職の噂まで飛び出してきた。7月に東京営業部の鮫島太一部長が来て、たまには外で食事しながら話そうと外に出てレストランに入り奥の席に着いた。小さな声で遂に会社から早期退職者を募集するらしいと言った。そこで使えない業績下位のセールスを一掃せよと上司からの命令が出たと知らされた。

 もう既にそのリストはできていると言い、その書類を見せてくれた。これは渡す訳にはいかないが世田谷からは山田鉄男、君島三郎、安井健二がリストに載っているというと山田鉄男は、まだ入社1年半じゃないですかというと、そうなんだ、ひどい話だとは、わかってる。でも社命だと言われ池田所長には退社させる口実を考えて欲しいと言われた。

 それはいくら何でもできませんというと何回も同じ事を言わせるな社命だと言った。期日は、いつまでですかと聞くとできるだけ早くと言われた。できたら聞いておきますとだけ答えた。食事した後、鮫島部長が、俺も、お前も人ごとではないんだ、いつ俺たちに退社勧告が出るかもわからないんだと言った。

 うちも子供2人が私立大学に入っている。マンションのローンも20年以上残っていて、人ごとじゃない頭痛いよと打ち明けた。部長が自分の事ばかり言うので池田は頭にきていた。食後、用件は、それだけですねと言い仕事に行ってきますと席を立った。8月また東京営業部の鮫島太一部長が来た。

 今井所長に、まだかよと言うので部下を辞めさせたくないと突っぱねた。勢い余って、その代わり、私が辞めますと思わず言ってしまった。すると、そーか辞めるのか、良いご身分だなと吐き捨てるように言った。そこで、堪忍袋の緒が切れて冗談じゃない、こんな理不尽なこと納得できないだけだと叫んだ。

 ところで、お前、いくつだと聞くので50歳と言うと、いいな50才以上は今の退職金の倍額出るそうだぞと、にやけた顔して言うのに我慢がならなくなって思わず、ふざけんなと言って席を立って店から出て行った。

 その後、辞表を書いて、提出して2001年8月25日付で退職、退職金1800万円の倍額3600万円が入金され、退職当時、預金額は1500万円程度であり池田松男の資産合計は5100万円だった。
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