第1話:夜間大学卒で営業へ

文字数 2,710文字

 池田松男、東京と立川市で1951年8月14日に生まれ、両親は専業農家で、くる日もくる日も畑に出て夜遅くまで仕事をして帰ってきては売れ残った野菜と、家で飼っている鶏の卵を使った卵焼きか、朝は、卵かけ御飯という生活であった。

 そのため成人した頃には、卵が苦手になる程食べさせられた。あわせて野菜も苦手になった。そんな生活のため、家は貧しく、高校を出でも、簡単に大学に進学という訳にはいかなかった。それでもアルバイトをしながら中央大学の夜間部に入学し5年間かけて経済学部を卒業した。

 昔から話が上手で近所でも、多くのおばさん方に可愛がられていた。人なつっこい笑顔が人気だったようだ。そうして人と話をする仕事、営業、セールスの道を選んでN保険の営業部に1975年4月入社しセールス活動に従事するようになった。

すると、彼の笑顔と愛嬌で次々と保険の契約を取れるようになった。成功した時の状況や成功した理由を克明にメモして営業報告書として多くのノートを記入し続けた。そして失敗例を克服する努力を欠かさなかった。

 その後、積極的に営業活動に邁進し、その結果3年目にして多摩営業所での契約件数トップになった。その後、ある企業の山北社長から釣りに誘われ餌をつけたりして手伝っていた。魚が釣れた時は手をたたき社長のご機嫌を取った。

船が岸に戻った時、今回の働きに報いてやるから保険の契約をしてやろうと肩をたたいた。来週訪問の時、私にとって一番有利な商品を持って来いと告げた。次週、訪問時、奥さん、子供さんにも守備範囲の広い健康保険と死亡保険の入った商品を提案。

 また、税金控除にもなるので社長にも有利だと訴えた。そして大口の契約をとれた。次の契約を取るために何故、成功したかを細かくメモした。次に死亡保険だけだと片手落ちだと説明して周り、健康保険プラス死亡保険を宣伝した。

 そして、その宣伝が当たり大口の健康保険+死亡保険の大口の契約をたてつづけに10件契約に成功。新規開拓のため一日、20件以上の新規訪問先の訪問する事を心に誓い、新規先でも松男にあいそうな、お客にターゲットにして攻勢ををかけた。

 新入社員や最近結婚したや社員や健康保険や死亡保険に入っていない人の情報をもらって回った。そうすると気の弱そうな最近、結婚した26歳の男性にもし病気や怪我で入院、手術したときの費用を見せた。

 そう言う費用まで補償する契約をすすめて契約を取ると残り2人の最近結婚も根こそぎ契約をとった。契約してくれた人にお土産を持って行き契約を取れるのはもちろん。別に情報をくれた人に、他の人に見つからない様に、お土産を欠かさず持って行った。

 数日後、以前、釣りにお供して契約してくれた、山北社長からの電話でお得意さんの接待を手伝ってくれないかと言われ呼ばれた。指定された時間に行くと餌を5つの小箱に分けて接待する人に分けて欲しいと言われ、すぐに分け始めた。

 その中で一番長老で実力者の今井光男社長が目が悪いので釣りの餌を上手につけられないので、つけてやって欲しいと言われ快諾。20分後、今日の乗り合い船のメンバーが全員そろった。

 最初にホストの山北社長が挨拶して船に乗り20分して釣り場に到着。池田松男が今井社長が釣りの餌つけに苦労してるのを見て、お手伝いしますと言い、目だけは良いのでと笑いながら言うと、じゃー頼むと答えた。

 餌をつけて15分後、竿がしなった。それを見て池田が間髪を入れず、わーすごい引きですねと大きな声で言った。笑顔で、それは釣ってからだと言い返した。10分位して引きが弱くなったので、どんどんリールを巻き大きな魚影が見えると大きな真鯛だった。

 今井社長は興奮し「大きな真鯛だー」と叫んだ。最後はゆっくりあげた。それをたも網で池田がすくい今井社長の所へ持って行くと30cm越えの大きな真鯛。今井社長が喜んで、池田に向かって、「あんたは福の神じゃ」といって肩をたたいた。

 また餌をつけて釣り糸を投げれた。他の人達は、鰺やタコが多く、なかなか大物は釣れない。そのうちまた今井社長に当たりがきた。先ほどのような強い引きではないが手応えが、ずしりと重い。そこで、釣り糸を引いてみたり、緩めたりして魚が疲れるのを待った。

 10分位で弱ったようで急いで糸を巻いてみると黒い斑点の模様で石鯛かイシガキダイのようだと船長が言った。あげてみるとイシガキダイだった。珍しい魚を釣りましたねと船長に言われた今井社長が、いや、まぐれですよとうれしそうに笑った。

 それを見ていた山北社長が「鯛2匹ですか、すごいですね」と誉めると、まんざらでもなさそうに、今日は君の連れてきた池田君が僕の福の神だと言った。また連れてきてよと言ってくれた。
 そして3時間が過ぎて船宿に帰って解散となった。今井社長が池田に名刺をちょうだいと言い「うちの会社にもセールスに来て良いぞ」と言ってくれた。「その代わり、また一緒に釣りをつき合ってくれよな」と肩をたたかれた。

「少しオーバーに承知しました、またお供します」と笑顔で答えた。数日後、池田が今井社長の会社を訪ねると歓待してくれた。我が社は、今も発展中で首都圏中心に横浜、東京、世田谷、川崎、大宮、千葉に支店があると話した。

 そして私が釣り好きなので、会社には、釣り同好会もある。もし良かったら参加しないかと誘われた。是非お願いしますと言うと釣りの日が決まりしだいFAXを入れるよと話してくれた。そして「仕事の邪魔にならない程度で、挨拶して良い」。

 また「昼休み、若い社員が出てくるから営業活動しなさい」と小さな声で、ささやいた。昼休みまで待って、若い社員さん2人にに名刺とパンフレットを渡した。彼らが、まだ保険は入ってないんだけれど自分にあった商品を紹介してと言われた。

 次回、おすすめの商品のパンフレットして欲しいと求められた。そこで、年齢、既婚、未婚、近い将来結婚の予定、親との同居か否か、また車を死亡保険もつけるか否かなどを数分で聞きメモした。

 数日後、再び、昼頃に今井産業を訪問して保険商品の企画を依頼された2人に、それぞれ3つの商品のパンフレットを持参。その保険の特長、支払い金額と保証金額がわかる書類を渡し、検討してくれるようにお願いした。

 それを見ていた今井社長が、一緒に昼食に行こうと誘われ、お供した。その席に、会社の釣り同好会の会長の吉本営業部長がおられ紹介してくれた。すると「彼が社長の福の神ですかと笑いながら言った」。
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