第20話 私はスター

文字数 769文字

○東京台東区、場末の激安スーパー「アスナロ」

キャッシャー兼売り子のアルバイト面接室

次の方〜、星さん。星百合絵さーん。
はじめまして、星です。
(Mgr)国家非常事態のコロナ時短でね、だいぶ女性従業員を整理したんだけどまたお客さんが戻ってきたんで売り場とレジを新規採用しようと思ってね。
....
経歴を見させてもらったんだけど...都内の高校を卒業してから劇団いろはに入団、アルバイトをしながら舞台女優の生活、はや十年二十八歳と...キミ女優なの?
ワタシはスター、輝ける星。
まあ、星さんだけにね。しかしそろそろ自分の人生にふんぎりをつけてもいい頃なんじゃないの?舞台演劇の女優なんて、よく聞く話だからね。
ワタシは夜空に輝く一等星...一般大衆みたいな五等星、六等星とは違うの...
...一等星?...(巨人の星かな)、売り場では声を張れるかな。臆して声が小さいようじゃ、難しいよう。
ガチャ!

イケメンの正社員、玉次郎君がシフト表を持って入室。

マネージャー、頼まれてたシフト表作っときましたよ。
おーっ、ありがとう玉次郎君、キミはエクセルの名手だから助かるよ。
おーっ、玉次郎!ワタシは貴方との禁断の恋に脚を踏み入れてしまった。恋文という証文もなしに!
急に声を張る星さん。
なんじゃ、この人。
怪訝な表情で退散する玉次郎君。
玉次郎。あなたはなぜ行ってしまうの。情熱の夏が去りゆくようにっ!
はーっ、はっはっは。こりゃ、面白いや。明日からさっそく来てもらおうかな。
ワタシはスター、輝ける一等星。
うん。アルバイトとして勤務実績を地道に積めばバイトリーダーとして、名札に☆印をつけてあげるよ。
ワタシの人生の落とし所かも。キャハ。
ねえ、キミ。舞台演劇なんて、実際のところ生活は苦しいんじゃないの。夢だけでは食っていけないし...
港区でパパ活女子しようかしら...
えっ⁈
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