第16話 戦国な奴

文字数 631文字

○東京都台東区、場末の激安スーパー「せんごく」のアルバイト募集、面接室
(採用担当者)次の方〜、小田さーん、どうぞ〜
どうも初めまして、小田です。よろしくお願いします。
採用担当者、小田さんの履歴書に目を通す。
えーっと、都内の三流大学を卒業後、中小企業に就職した。そして同年五月に退職、以降自宅待機、現在に至る。二十八歳と。

なぜ、そんなに急に辞めたんですか?

小田さん、しんみり。
桶狭間が風雲急を告げました。
桶狭間?愛知県に親類縁者でもいるのかな?単なる五月病ではないですか。

それにしても以降の自宅待機が長過ぎませんか?何か健康状態に問題でも?

城の本丸を護りました。

天守閣から見まするに本能寺は近いっ!

城の本丸?自宅のリビングのことかな。

それに本能寺は近くありませんよ、京都府ですからね。東京駅から新幹線に乗らないと、新型コロナで空いてるかもしれませんけど。
小田さん、急に激昂。
種子島はどこに?千丁はないと戦には勝てませんぞ!
あー、あの鹿児島産のスイートポテトね。今朝、千本入荷しましたから、さっそく生鮮売り場で販売してもらいましょうか。
小田さん、めげずにまた激昂。
してっ、長槍は?
長野県産の長芋も既に入荷しました。
小田さん、静かに。
人生わずか五十年〜♪下天のうちをくらべばー夢幻の如くなり〜
あんたまだ二十八歳で何言ってるんですか、わたしなんかもう還暦を過ぎてますよ。明日開店前の九時半に出社してもらえますか?
小田さん、何かを諦める。
是非に及ばず。
是非頑張ってください。
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