第22話 ベースボールな奴

文字数 837文字

東京下谷の零細出版社「スポコン出版」の中途採用面接にまた珍奇な希望者がやって来た。
○東京下谷スポコン出版、中途採用面接室。
(人事採用担当Mgr馬場)それではー、次の方〜、星野ピーマンさん。どうぞー。

(はー、コロナ禍で買い手市場なのに変わった人ばかりだわ)

どうも、はじめまして。

星野ピーマンです。

はじめまして、人事採用担当の馬場です。

えーと、経歴を見ましていただきましたけど•••

地元の鬼子母神短大で栄養学を学ばれて、調理師と栄養士の資格を取られた•••畑違いではないですか?うちは出版社ですよ。

僕は、小学校から大学まで野球をやっていまして、野球を題材にした感動巨篇を描いてみたいんです。

俺は、最高に燃えてるぜいっ!

(燃えてるぜいって、放火犯じゃないでしょうね)

そーですか、それじゃあらすじとクライマックスをざっと聞かせてもらえますか。ウチも出版社なので興味があるわ。

はいっ、タイトルは「虚人の星野くん」。

虚弱体質の星野くんが、白米から雑穀米に切り替えて、

毎朝快便になり、風邪を引かなくなるが、野球はうまくならないので、マネージャーに転身し皆にお弁当を作るという話。最後は、女子マネージャーと恋仲にもなる私小説、このコロナ禍にぴったりの感動巨篇です。

(はーっ、全く売れない話だわ)

それでは、星野さんは小説の方で頑張っていただくという方向性で•••

わが社との話は無かったことに•••

待ってくれい、馬場さんよ!

俺の瞳に何か見えないか?

何も見えませんけども。
俺の瞳の中に真っ赤な炎が燃えているはずだ!
目が火傷して失明しますよ。
さっきから、何を騒いでおるのか。
騒ぎを聴きつけて、社長登場。
あっ、社長。

この方、少し変なんです。

ふーむ、キミは如何にして我が社に貢献しようとしているのかね?
はいっ、採用の暁には、毎日送りバントを決めたいと思います。
ふーむ、現代青年にしては犠牲的精神があるじゃないか。

よしっ、採用してやろう。

ウーウーウー

プレイボールっ!

ふむふむ。
えーっ。

(こりゃ苦労するわ)

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