第19話 前世に生きる女

文字数 727文字

○東京新宿の歌舞伎町、ネイルサロン「ブエルサイユ」の新人募集
(店長)次の方〜、安藤マリさーん。どうぞ〜。
わらわを呼ばわったのはぬしか?苦しゅうない。わらわはの名は、マリー.アントワネット!
まあ、逆に読めばそう言えないこともないけど...ギャグですよね?

随分と派手な格好ですけど。

わらわは、キャバクラ「ウイーン」のNO.1
そ、それがどうしてウチに?
あまたの下郎に言い寄られて、わらわは疲れた。もっとハイソなご婦人方と仮面舞踏会を開きたい。
仮面舞踏会?そういうことはやってないんですよね。
騒ぎを聴きつけ、オーナーの露別が登場。
初めまして、オーナーの露別です。

なんだ、店長ばかに騒がしいぞ。

この女っ、ちょっと変なんです。
ほうっ、私は北海道出身だが、あなたお国はどちらですか?
わらわは、オーストリアのウイーン。
履歴書には、千葉県千葉市鵜の森って書いてあるんだけどなぁ。
キミね、夢みたいなことばかり言ってるとご飯は食べていけないよ。コロリンウイルスで国民全体が苦しい御時世なんだからね。
ほーっホッホ、ご飯がなければケーキを食べればいいのに。
クリスマスじゃあるまいし。
キミね、そんな呑気なことじゃ、採用されてもすぐクビになっちゃうよ。
そういうあなたは、そう思い出したわ。ロベスピエール!わたしは、コンコルド広場で断頭台の露と消え去るんだわ。ああっ、可愛そうな、そうよ私はウイーンの美しき珠。
キミ、面白いね。

今、歌舞伎町はひと脚が少なくなって寂しいけど、キミみたいなキャラクターがいたら話題性があって客足も戻るかもね。明日から、来てくれたまえ。

プロイセンの侵攻を止めるためなら仕方ない。喜んで、ブエルサイユに輿入れしようぞ。
ははは。よろしくね。

(難しい新人さんだなぁ)

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