耀子の正体(三)
文字数 1,055文字
僕たち二人の食欲が治まってから、敏子叔母は僕たちに話を始めた。
「どう、落ち着いたかしら?」
「ええ、とても美味しかったです」
「ご免なさいね、在り合わせのもので作ったから、ツナサンドしか出来なかったのよ。幸四郎が、もう少し前に連絡してくれれば良かったんですけどね……」
「いいえ、キチンと玉葱を晒して、レモンを添えているなんて、すごい手間をかけて頂いていますわ。本当に美味しい。何より心が籠っている」
「そんなことありませんよ」
「へぇー、叔母さん、結構凝っているんだ」
「お前には分からないだろうけどね……」
耀子先輩は落ち着いてきたのか、叔母に改めて頭を下げる。僕の方は、まだまだツナサンドを頬張っていたが……。
「耀子さん、私、貴女 の正体が分かっちゃたのよ……。でね、そのことをお話したくて、うずうずしてるの! 私のお相手してくださるかしら?」
「あら、困りましたわ。どうしましょう?」
それまで僕は、黙々とサンドウィッチを食べていたのだが、手を止めて、常人離れした二人の霊能力者(?)の対決に唾を飲み、目を見張らせた。
二人は黙って視線を合わせている。それは相撲の立ち合いで、時間前の仕切りの時、お互いの対戦相手を睨みつけるさまに、どこか似ている様に僕には感じられた。
「耀子さん、私ね、ある廃業したお坊さんと、偶然お話する機会があったのよ。その人はね、光臨派と云う宗教団体に居られた方で、そこで、ある恐ろしい方と対決されていたんですって……」
「光臨派操舵主に、少し抗議をしないといけないようですね。辞めていく方に、ちゃんと機密保持の誓約をさせるようにと……」
僕は二人の会話に割って入る。
「叔母さん、耀子先輩が妖怪だろうと、何だろうと良いじゃないですか? 叔母さんだって、使い魔を使っているでしょう? 僕にとって、耀子先輩は邪悪なものでも何でも無いんです。放っておいてください!」
「お前は本当に何も分かっていないねぇ」
叔母は呆れた様に態と大きな溜息を吐く。
「え?」
「こちらのお嬢さんは『自分は神仏ではない』と仰有 ったけど、インドでは悪魔を食べるガルーダは神様なんだよ。分かるかい? それと同じ……。この方はね、悪魔を狩る者、耀公主だったんだよ」
「耀公主?」
僕は耀子先輩の顔色を窺った。彼女は少し下を向き、薄笑いを浮かべている。
「ああ……。数百年に一度、時空の裂け目から襲って来る大悪魔を退治し、その能力を吸収する魔神。幾度も幾度も転生し、この世界を悪魔の手から守り続けている……。
「どう、落ち着いたかしら?」
「ええ、とても美味しかったです」
「ご免なさいね、在り合わせのもので作ったから、ツナサンドしか出来なかったのよ。幸四郎が、もう少し前に連絡してくれれば良かったんですけどね……」
「いいえ、キチンと玉葱を晒して、レモンを添えているなんて、すごい手間をかけて頂いていますわ。本当に美味しい。何より心が籠っている」
「そんなことありませんよ」
「へぇー、叔母さん、結構凝っているんだ」
「お前には分からないだろうけどね……」
耀子先輩は落ち着いてきたのか、叔母に改めて頭を下げる。僕の方は、まだまだツナサンドを頬張っていたが……。
「耀子さん、私、
「あら、困りましたわ。どうしましょう?」
それまで僕は、黙々とサンドウィッチを食べていたのだが、手を止めて、常人離れした二人の霊能力者(?)の対決に唾を飲み、目を見張らせた。
二人は黙って視線を合わせている。それは相撲の立ち合いで、時間前の仕切りの時、お互いの対戦相手を睨みつけるさまに、どこか似ている様に僕には感じられた。
「耀子さん、私ね、ある廃業したお坊さんと、偶然お話する機会があったのよ。その人はね、光臨派と云う宗教団体に居られた方で、そこで、ある恐ろしい方と対決されていたんですって……」
「光臨派操舵主に、少し抗議をしないといけないようですね。辞めていく方に、ちゃんと機密保持の誓約をさせるようにと……」
僕は二人の会話に割って入る。
「叔母さん、耀子先輩が妖怪だろうと、何だろうと良いじゃないですか? 叔母さんだって、使い魔を使っているでしょう? 僕にとって、耀子先輩は邪悪なものでも何でも無いんです。放っておいてください!」
「お前は本当に何も分かっていないねぇ」
叔母は呆れた様に態と大きな溜息を吐く。
「え?」
「こちらのお嬢さんは『自分は神仏ではない』と
「耀公主?」
僕は耀子先輩の顔色を窺った。彼女は少し下を向き、薄笑いを浮かべている。
「ああ……。数百年に一度、時空の裂け目から襲って来る大悪魔を退治し、その能力を吸収する魔神。幾度も幾度も転生し、この世界を悪魔の手から守り続けている……。
月氏耀公主
、月宮盈
だったのさ!」