暗い闇(三)
文字数 1,146文字
正午を少しまわった頃、僕が駅に着くと、改札脇の券売機の先にある庇のある場所で、彼女は日差しを避け、物思いに耽 る様に下を向いて僕を待っていた。
そして、僕が近づくと、気配で気が付いたのか、声を掛けられる前に顔を上げ、僕にニッコリと微笑んで見せる。
「遅かったね、幸四郎。もう混んでるわよ。あそこ、人気あるから……」
「すみません、でも……」
「丁度いいわ。私、それほどお腹空いていないのよ。コーヒーでも良いかしら? 角の喫茶店で。幸四郎はランチでも頼んだら?」
別段、僕はそれを画策した訳ではなかった。しかし、それでも今日、ハンバーグ定食2人前にお金を使うのと、自分も昼飯を我慢してコーヒー2杯とでは、今月の残りの生活費を考えると天と地ほどの開きがある。この天の配剤に、僕は少なからず感謝した。
だが、行ってみると、角の喫茶店も昼のランチタイムは結構混んでいた。そこで、僕たちは喫茶店も諦め、結局、公園のベンチに座り、コンビニで買ったチキンを頬張りながら、少し話をすることにしたのである。
「要先輩って、ミステリー愛好会に入っているんですか?」
実の処、これは僕も既に知っている情報であった。しかし、今の僕には驚いた表情でそれを受け止める余裕がある。
「ええ、そうよ。だから、あんな所にいたって訳……。でも、やっぱり、あそこにも、未確認生物はいなかったんだけどね……」
「でも、お化けか何かは出そうでしたよ」
「ちょ、ちょっと止めてよ! 私、お化けとかって苦手なのよ!!」
ミステリー愛好会に入って、未確認生物を追いかけて、それでいて、お化けが苦手?
僕には、この要耀子と云う女性がなんとも不思議で、ある意味可愛く感じられた。
「でも、ミステリー愛好会って面白そうですね。僕も入ってみようかな?」
「あら、いいんじゃない? もし、そうなったら、私嬉しいな。サークルの後輩が出来ることになるし……」
実際、僕は、未確認生物がそれほど面白いと思っていた訳ではない。しかし、この先輩と一緒にいられるのであれば、サークル活動ってのも楽しい様に思えてきた。
僕たち二人は、そのあと午後の講義が始まるまで、授業の話とか、医療についての話とか、色々と恋人同士の様に公園で語らった。そして、この関係は今後も続くものと、僕は全く疑いを持っていなかったのだ。
だから、次を約束をする必要は全くないと僕は考えていた。しかし、何故かそれ以降、彼女とキャンパスで出くわすことは無くなってしまったのである。
月が終わるまでは、僕は彼女に会わなかったことを少しだけ喜んでいた。そして、アルバイト代が入った後は、寧ろ、会いたくて会いたくて仕様がなかった。それでも、彼女とは不思議と顔を合わせることはなかった。同じキャンパスにいる筈なのに……。
そして、僕が近づくと、気配で気が付いたのか、声を掛けられる前に顔を上げ、僕にニッコリと微笑んで見せる。
「遅かったね、幸四郎。もう混んでるわよ。あそこ、人気あるから……」
「すみません、でも……」
「丁度いいわ。私、それほどお腹空いていないのよ。コーヒーでも良いかしら? 角の喫茶店で。幸四郎はランチでも頼んだら?」
別段、僕はそれを画策した訳ではなかった。しかし、それでも今日、ハンバーグ定食2人前にお金を使うのと、自分も昼飯を我慢してコーヒー2杯とでは、今月の残りの生活費を考えると天と地ほどの開きがある。この天の配剤に、僕は少なからず感謝した。
だが、行ってみると、角の喫茶店も昼のランチタイムは結構混んでいた。そこで、僕たちは喫茶店も諦め、結局、公園のベンチに座り、コンビニで買ったチキンを頬張りながら、少し話をすることにしたのである。
「要先輩って、ミステリー愛好会に入っているんですか?」
実の処、これは僕も既に知っている情報であった。しかし、今の僕には驚いた表情でそれを受け止める余裕がある。
「ええ、そうよ。だから、あんな所にいたって訳……。でも、やっぱり、あそこにも、未確認生物はいなかったんだけどね……」
「でも、お化けか何かは出そうでしたよ」
「ちょ、ちょっと止めてよ! 私、お化けとかって苦手なのよ!!」
ミステリー愛好会に入って、未確認生物を追いかけて、それでいて、お化けが苦手?
僕には、この要耀子と云う女性がなんとも不思議で、ある意味可愛く感じられた。
「でも、ミステリー愛好会って面白そうですね。僕も入ってみようかな?」
「あら、いいんじゃない? もし、そうなったら、私嬉しいな。サークルの後輩が出来ることになるし……」
実際、僕は、未確認生物がそれほど面白いと思っていた訳ではない。しかし、この先輩と一緒にいられるのであれば、サークル活動ってのも楽しい様に思えてきた。
僕たち二人は、そのあと午後の講義が始まるまで、授業の話とか、医療についての話とか、色々と恋人同士の様に公園で語らった。そして、この関係は今後も続くものと、僕は全く疑いを持っていなかったのだ。
だから、次を約束をする必要は全くないと僕は考えていた。しかし、何故かそれ以降、彼女とキャンパスで出くわすことは無くなってしまったのである。
月が終わるまでは、僕は彼女に会わなかったことを少しだけ喜んでいた。そして、アルバイト代が入った後は、寧ろ、会いたくて会いたくて仕様がなかった。それでも、彼女とは不思議と顔を合わせることはなかった。同じキャンパスにいる筈なのに……。