暗い闇(四)
文字数 1,218文字
それからの僕は、ことある毎に彼女がいないかと、彼女の姿を探し続けた……。
ミステリー愛好会にも何度か行ってみた。しかし、毎回その日に限って彼女は会合を欠席している……。そして、彼女と逢ってから三ヶ月後の夏、僕はサークルに入る決心もし、それを実行した。そうすれば、彼女がそのサークルを辞めない限り、いつか必ず会えると思ったからだった……。
しかし、彼女は現れなかった。結局、僕がサークルに入ったことは、彼女をサークルから追い出しただけに過ぎなかった。
要耀子は間違いなくこの医科大に在籍している。誰に聞いても、彼女は普通にそこに存在して授業を受け続けている。しかし、何故か僕とだけは会うことがない。
結局、それから三ヶ月もの間、僕はミステリー愛好会で一度も活動らしい活動をせず、いつしか、サークルの会合にも出席することが無くなっていた……。
だが……要耀子は、突然僕の前に現れた。
それは、僕が始めて彼女に会ってから、略 半年が過ぎた晩秋のことだった……。
僕が一人で暗い夜道を歩いていると、背後から、あの澄みきった声で、僕は呼び止められたのである。
「幸四郎、久しぶり」
僕は立ち止まりはしたが、あえて振り返らなかった。振り返ると、そこには誰もおらず、結局、空耳と云うことになってしまいそうだったからだ……。
僕は後ろ向きのまま、彼女の姿を見ずに先輩との話を始めた。
「要先輩、今まで、何処へ行っていたんですか? いえ、先輩は何処にも行っていないですよね……」
「ええ、私は何処へも行っていないわ。あなたに見られない様にしただけ」
「どうして、そんなことをしたのです?」
「あなたが恐ろしかったからよ」
「え?」
「最初は、あなたが脅威だったから、何の脅威か知りたくて、敢えてあなたと話をし食事もしてみた……。そして、あなたと公園で話をした後、私は何人かの女性に襲われたわ。それで、私を殺す為、あなたが女性たちに指示を出していると私は思ったの……」
「そんなこと……、僕がする訳ないじゃないですか!」
「そうね。確かにそれは間違いだった。彼女たちは単に私に嫉妬しただけ……。あなたが私に興味を持って尋ねまわった時に、時折あなたが私を擁護する様な発言をするので、やきもちを焼いただけだったわ……」
「だったら、いいじゃないですか?」
「駄目よ……。私は単に嫉妬に狂っただけの普通の女の子の相手をしなくちゃならないのよ。本当、あなたって恐ろしい人だわ。厄介って言った方がいいかもね……」
「何ですか、厄介って?」
「フフフ、ご免なさいね……。ところで、あなた、彼女なんかいないの?」
「僕は耀子さんと付き合いたいんだ!」などとは流石に言えないので、僕は別にいないとしか答えようがなかった。
「要先輩はどうなんです?」
「付き合っている人はいないけど、夫ならいるかな……」
僕は目の前が暗くなった……。
そして、さっき彼女に告白しなくて、本当に良かった……。僕はそう思った。
ミステリー愛好会にも何度か行ってみた。しかし、毎回その日に限って彼女は会合を欠席している……。そして、彼女と逢ってから三ヶ月後の夏、僕はサークルに入る決心もし、それを実行した。そうすれば、彼女がそのサークルを辞めない限り、いつか必ず会えると思ったからだった……。
しかし、彼女は現れなかった。結局、僕がサークルに入ったことは、彼女をサークルから追い出しただけに過ぎなかった。
要耀子は間違いなくこの医科大に在籍している。誰に聞いても、彼女は普通にそこに存在して授業を受け続けている。しかし、何故か僕とだけは会うことがない。
結局、それから三ヶ月もの間、僕はミステリー愛好会で一度も活動らしい活動をせず、いつしか、サークルの会合にも出席することが無くなっていた……。
だが……要耀子は、突然僕の前に現れた。
それは、僕が始めて彼女に会ってから、
僕が一人で暗い夜道を歩いていると、背後から、あの澄みきった声で、僕は呼び止められたのである。
「幸四郎、久しぶり」
僕は立ち止まりはしたが、あえて振り返らなかった。振り返ると、そこには誰もおらず、結局、空耳と云うことになってしまいそうだったからだ……。
僕は後ろ向きのまま、彼女の姿を見ずに先輩との話を始めた。
「要先輩、今まで、何処へ行っていたんですか? いえ、先輩は何処にも行っていないですよね……」
「ええ、私は何処へも行っていないわ。あなたに見られない様にしただけ」
「どうして、そんなことをしたのです?」
「あなたが恐ろしかったからよ」
「え?」
「最初は、あなたが脅威だったから、何の脅威か知りたくて、敢えてあなたと話をし食事もしてみた……。そして、あなたと公園で話をした後、私は何人かの女性に襲われたわ。それで、私を殺す為、あなたが女性たちに指示を出していると私は思ったの……」
「そんなこと……、僕がする訳ないじゃないですか!」
「そうね。確かにそれは間違いだった。彼女たちは単に私に嫉妬しただけ……。あなたが私に興味を持って尋ねまわった時に、時折あなたが私を擁護する様な発言をするので、やきもちを焼いただけだったわ……」
「だったら、いいじゃないですか?」
「駄目よ……。私は単に嫉妬に狂っただけの普通の女の子の相手をしなくちゃならないのよ。本当、あなたって恐ろしい人だわ。厄介って言った方がいいかもね……」
「何ですか、厄介って?」
「フフフ、ご免なさいね……。ところで、あなた、彼女なんかいないの?」
「僕は耀子さんと付き合いたいんだ!」などとは流石に言えないので、僕は別にいないとしか答えようがなかった。
「要先輩はどうなんです?」
「付き合っている人はいないけど、夫ならいるかな……」
僕は目の前が暗くなった……。
そして、さっき彼女に告白しなくて、本当に良かった……。僕はそう思った。