第38話 『グレースの履歴』を探偵しましたのぢゃ!【5】

文字数 1,055文字

【5】

 第7回に於きまして、主人公の希久夫(きくお)は、図らずも元恋人であった草織(さおり)のマンションに泊まる事態となり、寝る部屋は別とは云え二人は草織の家で一夜を過ごす羽目になるのでありますな。

 希久夫と草織は17年前に婚約しておりましてな、結婚を目前にしていた矢先、草織が勤務する会社から1年間のアメリカ勤務を命じられるのですわい。
 で、希久夫の父から「草織さん、いい経験だ。結婚前にぜひ行ってきなさい」との勧めもあり、希久夫も「これまで何年も付き合ってきたんだから、1年待つくらい平気さ」と器の大きなところを見せて、送り出したのが運の尽き、アメリカに渡った草織は、現地でアメリカ人と恋に落ち、妊娠し結婚してしまい、日本へは帰らずじまいで希久夫と別れてしまうのぢゃな。

 簡単に言うと、草織は1年足らずのアメリカの生活でアメリカ人に釣られてしまい、学生の頃から長らく付き合っている希久夫をポイっと捨ててしまった訳ですな。フム。
 で、そのアメリカでの結婚生活も破綻し、草織は子供をアメリカに残したまま、日本に帰国して松山で友人と共にガーデン・カフェを共同経営しておったのですわい。

 希久夫を演じるのは滝藤賢一さんでありましてな、飄々とした理工系男子を好演しておるのでありまして、片や草織を演じるのが広末涼子であります。
 このドラマを観ておって、広末涼子が登場した際に、彼女の演技が妙になまめかしく見えましてな、自分勝手に日本で待っている恋人を捨ててアメリカで結婚したくせに、離婚して帰国し一人暮らししているところに、元恋人の希久夫が現れたら、なんだか復縁の気配を匂わせぶりに振りまくような中年女性を生々しく演じておったのですわい。

 で、先般、なにかと話題の渦中におられました広末女史でございますがの、このドラマの撮影の頃は、ちょうどアバンチュールがお盛んな時期だったのでしょうから、そんな小悪魔的悪女の役柄がぴったりとはハマったのでしょうな。
 しかし、それにしても、不倫していた最中に、不倫する役を貰って演じる羽目になるとは、さすがの広末女史も苦笑するほかなかったのではありませんかのう。

 これまでは、歌舞伎役者さんのような方々が「女遊びは芸の肥やし」などとおっしゃいまして、盛んにお遊びになったようですがな、『グレースの履歴』に於ける広末女史は、まさにアバンチュールが芸の肥やしになったような感がありましてな、とうとう女優の方も「色恋沙汰は芸の肥やし」と云うような時代になったかと、男女平等の時代を深く実感する懲無庵ぢゃった。

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