第23話 探偵小説を探偵しましたのぢゃ!【7】

文字数 1,073文字

【7】

 で、その奇怪な伝承ぢゃがな「八つ墓村」の方はですな……、
 「代々続く、八つ墓明神の祟りによって遂には発狂し、自宅に監禁していた愛人の逃走を契機に、32人殺しの残虐事件を起こしてしまった田治見要蔵の地主一族の血塗らた物語」ぢゃ。

 一方、「バスカヴィル家の犬」の方はぢゃな……、
 「その昔、代々準男爵家の当主であったヒューゴー・バスカヴィルは、権力に任せて悪仲間と悪行三昧の毎日。         
 土地の美女を拉致監禁しようとした際に、謎の巨大な魔犬が現れてヒューゴーの喉笛を噛み切って殺し、準男爵の悪仲間達も、その後謎の死を遂げた」と云う伝承ですわい。

 皆の衆、どうです? よく似ておるぢゃろ?
 田治見要蔵も、ヒューゴー・バスカヴィルも、女癖が悪くて、その女癖で身を滅ぼすところまで一緒ぢゃわい。

 で、物語の始まり、遺産相続人である若き主人公の登場時のエピソードもよう似ておる。

 「八つ墓村」は……、ある日突然に思いもよらず、岡山の山奥の寒村「八つ墓村」の大地主である田治見家の当主に迎えられる事となった辰弥。
 辰弥を探し出した弁護士の事務所で、事の次第を知らされた辰弥の元に、後日「八つ墓村に来てはならぬ!」との脅迫状が届く――。

 一方「バスカヴィル家の犬」は……、まるで、魔犬の伝承のような事件によって謎の死を遂げたバスカヴィル家の現当主チャールズ。
 それによって、急遽バスカヴィル家当主を引き継ぐ事になった若きヘンリーは、チャールズの親友で主治医であったモーティマー博士の手引によってバスカヴィル家に向う事になるのだが、そのヘンリーの元に「バスカヴィル家に赴いてはならぬ」との脅迫状が届く――。

 とここまで書いて……、改めて、こうして書き並べて比べてみると……、「横溝さん、これ、ほぼ一緒やないですか」と言いたくなるほど、よう似とる訳です。

 物語の舞台も、こっちは「屋敷の地下に、迷路のように広がる巨大な鍾乳洞と田治見要蔵の亡霊」、あっちは「下手に迷い込んだら、馬さえ呑み込んでしまう、底なし沼が点在する広大な沼地と、沼地に響く魔犬の怪しい鳴き声」ぢゃよ!

 しかもですな、双方とも、善意の第三者として登場する若い女性が、事件の鍵を握っておるところまで一緒ですわい。

 儂しゃ、金田一シリーズでは「八つ墓村」が、ホームズシリーズでは「バスカヴィル家の犬」が一番好きなのぢゃが、それもそのはず!と今になって気づきましたわい。
 だって、両方ともほぼ一緒なストーリー展開なんだもんね。

 つーところで、今回の探偵帖はここまでにしときますのぢゃ。
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