第21話 探偵小説を探偵しましたのぢゃ!【5】

文字数 986文字

【5】

 物語の終盤、灰色の脳細胞をフル回転させ、全ての謎を解いたポアロは、関係者各位を全員をエンドハウスに集め、謎解きと「犯人はお前だ!」宣言をするのぢゃが、この場面が、まさに探偵推理小説のお約束と言うか、お手本と言うか、まるで歌舞伎の名場面のような大団円。

 ようやく探し出された遺産相続遺書を弁護士がおもむろに開封し、出席者をぐるりと見回す。
 固唾を呑んで、弁護士の手元を凝視する出席者の面々。
 そんな様子を、得意気な面持ちで見守る名探偵ポアロ。

 TVドラマのそのシーンを目にしながら、儂の脳裏にデジャヴュのように浮かび上がったのが、映画「犬神家の一族」の冒頭シーンぢゃった。

 犬神財閥創始者、犬神佐兵衛が遺した遺産相続遺書の封を静々と開く古館弁護士。
 犬神本家の薄暗い大広間に端座する、佐兵衛翁の3人の娘とその親族の面々は、身じろぎもせずに古館弁護士を凝視している……。
 彼らの背後の床間には、佐兵衛翁の遺影が座敷を睥睨しており、座敷の片隅に身を小さくしながら出席者の面々を注意深く観察しているのが、古館弁護士の依頼を受け、風来坊のようにやって来た私立探偵金田一耕助――。

 「いや〜、映画ってのは本当にいいものですね」と思わず言いたくなるような、惚れ惚れとする、映画序盤の名場面ですわい。

 市川崑監督の「犬神家の一族」(1976年)は日本映画の伝統を踏まえながらも新境地を開いた、日本エンタテインメント映画の金字塔ですな。
 古館弁護士を演じる小沢栄太郎がいいのぢゃよ〜。
 こーゆー、もっともらしい説得力を醸し出す脇役が出ているだけで、一挙に物語にリアリティが出る訳ぢゃな。

 昔の日本映画界には、こんな重々しい説得力を持った重鎮脇役と言うかバイプレーヤーが、綺羅星のごとくずらりと揃っておったのぢゃ。
 どの時代も主役スターには事欠かないがの、現在のエンタテイメント業界に、特に不足しておるのが、それ相応の年齢を経た名脇役・バイプレーヤーぢゃ!と儂しゃ嘆いておるのぢゃわい。

 と、またまた脱線してしもうたがの、まあとにかく、「エンドハウスの怪事件」の大団円のシーンと、「犬神家の一族」の冒頭シーンは、思わず「えっ!?」と声が出るくらいよく似ておったのぢゃよ。

 儂の話はこれから佳境になるのぢゃが、廻り道しすぎて目がショボショボして来ましたのでな、続きはまた次回ですのぢゃ!
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