第36話 『グレースの履歴』を探偵しましたのぢゃ!【3】

文字数 861文字

【3】

 第4回では、ホンダ・スポーツ800、通称“S800”(エスハチ)の名前も連呼されますし、それが、ホンダの創始者本田宗一郎の号令で開発された事も明かされますし、その“エスハチ”が、かのハリウッド女優からモナコ王妃となったグレース・ケリーの愛車であったことも明かされますのぢゃ。

 事故で亡くなった妻の足跡を辿るため、遺された妻の愛車であった“グレース”を駆って旅に出た夫。
 旅の途中で、“グレース”が故障し、偶然助けられたバイク修理工場。
 諏訪湖の辺りの街にある、そのバイク修理工場のマスター仁科は、かつてホンダの草創期のエンジニアで、世界選手権バイクレースでホンダが5回の優勝を成し遂げた際の総監督であり、その後ホンダの四輪部門に引き抜かれた、“エスハチ”の主任開発者であったことが明かされる。

 遡る57年前、その仁科はバイクレースのヨーロッパ遠征中に、グレース・ケリーの愛車であった“エスハチ”の修理を手掛けており、グレース・ケリーと話をした上に、その修理をした“エスハチ”のキャブレター・カバーに修理の証拠を彫り込む。

 そして……、主人公に遺された“エスハチ”が、なぜ“グレース”と名付けられたのか?
 ここまで読まれた賢明なる皆の衆なら、もうお分かりになるはずぢゃ。

 しかし、ドラマのこの件……、ホンダの歴史と“エスハチ”開発秘話は史実に忠実なのぢゃが、その主任開発者が仁科と云って、後年バイク修理工場を営むのかどうかは全く不明で、史実なのか作品中のフィクションなのかが判然といたしませぬのぢゃ。
 コンプライアンスに厳しいNHKが、メーカー名も商品名もモロ出しにして、ノンフィクションとフィクションが判然としない作品をよくドラマ化したものぢゃ、と感心しきりの儂なのぢゃ。

 しかし、ノンフィクション好きでリアリティ重視の儂はぢゃな、こんな史実を織り込んだ小説と云うのが大好きでしてな、まあ、そんな意味では、弟子を持ち上げるつもりはさらさらありませぬがの、龍田の『Brave-1』なんぞは、そんなテイストでしたわい。
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