鏡に映ったキラキラは

文字数 1,109文字

魔法の鏡が、ひときわ強い輝きを放ちました。

光が収まって、アプルが鏡をのぞき込むと、そこに映っていたのは。

――すごい。これは、大きい劇場か何かかな?

すっごいキラキラした舞台で、かわいい女の子が歌って踊ってる!

服もすごくかわいくておしゃれだし――それに、見てるお客さんもみんな楽しそう!

これは――ほかの世界に存在する、『アイドル』というお仕事のようですね。
あいどる……?

ステージの上でキラキラ輝くことで、周りのみんなにキラキラをおすそ分けする……。

そんなお仕事みたいです。

キラキラのおすそ分け……すごい! そんなお仕事があるんだ!

――私、決めた。私もアイドルになりたい!

ふむ、そうですね。私も賛成です。

あなたのようなかわいいアイドルなら、ぜひステージを見たい。

ステキなことを教えてくれてありがとう!

えーと⋯⋯、あれ? あなた、名前は?

名前は⋯⋯残念ながら覚えておりません。

さしあたってミスター・ミラーとでもお呼びください。

そう、ミスター・ミラー、改めてありがとう!
⋯⋯でもアイドルってどうやればいいのかな?
この世界にはまだないお仕事ですからね⋯⋯。

私もどこから始めていいのやら。

そういえば、街のはずれに使われなくなった劇場があったはず!

とりあえずまずはあそこを掃除して。

そしてとびっきりのおしゃれをして。

一番好きな歌と踊りを披露しましょう!

ふむ……行動力があることは大変素晴らしいことだと思います。

魔法のホウキを五本くらい使えば、お掃除は明日の午前中には終わるかなぁ。

そのあと急いでお洋服を選んで、うん、午後の三時くらいには舞台に立てそうね。

即席の初ライブですね。
らいぶ……アイドルの舞台のことをそう呼ぶのね。

アイドルにライブ――うん、とってもわくわくしてきた!

準備、頑張らないとなぁ。

ライブに向けてキラキラと輝くアプルの笑顔を受けて、ミスター・ミラーもキラリと輝いたように見えました。
そして翌日の朝早く。
さーて、さっそく掃除、がんばるぞー!
おー!

⋯⋯とは言っても私は鏡なので応援しかできませんが。

ちょっと、朝っぱらから騒がしいのよ!
ブランケット!? どうしてここに?

こっちのセリフよ! ――ここ、私んちの隣なんだけど。

あ……そうだったんだ、ごめん。知らなかった……。

でもブランケットって眠りの魔女なんだから、早く起こされたくなかったら自分に魔法かければいいんじゃない?

私の魔法は自分にはかからないの!
えっ、そうだったんだ、ごめん!

さて、こんな朝っぱらから起こしたからには、何をしてるのかちゃんと説明してもらうわよ。

嫌がらせだったら承知しないんだからね!

うん、私、今日からアイドルになろうと思って、今初ライブの準備中なの!

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登場人物紹介

【アプル】
ワンダーランドの片隅で暮らしている、りんごの魔女。
世界で二番目にかわいいけど、魔法の腕前はイマイチ。
かわいいことを生かして、自分らしくキラキラ輝きたいから、アイドルを目指します!

【ミスター・ミラー】

ホワイト城の物置きにあった、しゃべる魔法の鏡。

アプルにアイドルという存在を教え、

その後も時折アドバイスを伝える。

【カーレン】

赤いくつをはいた、ダンスが好きな少女。

両親を亡くしているが、ちょっとしたきっかけでメイド長の養子になる。

振付師としてアプルを支える。

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