ナゾの男、再び

文字数 1,127文字

その日の夜、アプルの夢の中。

――あれ? また何もない夢?

アプル、お久しぶりです。
うん、久しぶり。初めてのライブ以来だっけ?

ええ、今日のライブも素晴らしいキラキラでした。

おかげでまた、こうして夢に出てくることができました。

逆にキラキラがないと夢に出てこれないってこと?

キラキラがないとどうにもならないこと――って、もしかして、

あなた、何かの悪い魔法にかけられているとか?

――!

やっぱりそうなの!? それなら……私、あなたを助けたい!

アプル。ありがとうございます。ですが、お気持ちだけ受け取っておきます。
ええっ、なんで!?

いいですか? アプル。

私が戦っている悪い魔法はおそろしく強大なのです。

このような危険な争いに、あなたを巻き込むわけにはいきません。

うう……「おそろしく強大」なんて言われちゃうと、たしかにちょっと怖いかも。

聞き分けてくださいますか。

うん、確かに怖いよ。正直あんまり首をつっこみたくはないかも。

――でもでも、目の前で困ってる人を放っておくなんてできないよ!

お願い、私にも何か手伝わせて!

「目の前で困ってる人を放っておくなんてできない」ですか。

カーレンの時もそうでしたが……。

アプル、どうやらあなたの取り柄がかわいいだけだなんて、

あなたは自分の良いところをよくわかっていないようですよ。

かわいい以外の、私のいいところ……?
――って! さらっと流しそうになったけど、なんであなたがカーレンのことを知ってるの!?
ふふふ、さて、なぜでしょうね?
ちょっと、ごまかさないでよ!

そろそろ夜が明けるようです。

しかし、アプルのライブがあれば、またすぐにお会いできるでしょう。

なんだか、イイ感じにごまかされた気がする……。

ふふふ、それでは。

これからもファンとして、アプルを見守っていますよ。

えっ、ちょっと待って!

まだいっぱい聞きたいことが――!

アプルは自分の声で目を覚ましました。
ううぅ、起きて早々モヤモヤ気分⋯⋯。
おはようございます、アプル。どうやら変な夢でも見たようで。
おはよう、ミスター・ミラー。

アイドルはじめてから、たまーに変な夢を見るんだー。

まあ、怖い夢とか悲しい夢じゃないだけマシだけど。

あれ? そういえば鏡って夢は見るの?
――夢を見ることはありますよ。

普通の鏡はわかりませんが、私は魔法の鏡ですから。

えっ、どんな夢?

教えて教えて!

それが⋯⋯記憶がないせいでしょうか。

朝まで覚えていられないのですよ。

そっかー、残念。
何も残念がることはありませんよ。

私はアプルと起きて見るアイドルの夢の方が好きですから。

ミスター・ミラーって鏡のくせに、たまにカッコつけるよね⋯⋯。
でも、起きて見るアイドルの夢が好きなのは私も同じ!

よーし、今日もアイドルがんばるぞー!

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登場人物紹介

【アプル】
ワンダーランドの片隅で暮らしている、りんごの魔女。
世界で二番目にかわいいけど、魔法の腕前はイマイチ。
かわいいことを生かして、自分らしくキラキラ輝きたいから、アイドルを目指します!

【ミスター・ミラー】

ホワイト城の物置きにあった、しゃべる魔法の鏡。

アプルにアイドルという存在を教え、

その後も時折アドバイスを伝える。

【カーレン】

赤いくつをはいた、ダンスが好きな少女。

両親を亡くしているが、ちょっとしたきっかけでメイド長の養子になる。

振付師としてアプルを支える。

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