りんごの魔女 アプル

文字数 1,044文字

ワンダーランドの片隅の、ホワイト王国のそのまた片隅。


フルーツ村という小さな村に、それはそれはかわいい魔女が暮らしておりました。


そのかわいさに、青りんごすら思わず顔を赤らめるほどだったので、彼女は「りんごの魔女アプル」と呼ばれておりました。

さて、今日もいっぱいりんごが採れたわ。おやつはアップルパイにしましょう!
くるっぽー!
あら、ハトさんこんにちは。
くるっぽくるっぽー!
え? 私にお手紙? 何かしら。ずいぶん豪華な封筒だけれど……。
これは……! ホワイト城で開かれるパーティの招待状!?

確かに王妃様が亡くなって一年で、そろそろ喪が明けるけど⋯⋯でも、どうしてこんなものが私のところに!?

フン! どーせただのにぎやかしに決まってるわ!
むっ、その声は……!
やっぱり、眠りの魔女ブランケット!
そーよ! 眠りの魔女ブランケット様よ!
ただのにぎやかしってどういうことよ!
言った通りの意味よ!

だってあなた、顔がいい以外になんの取り柄がある?

魔女なのに魔法も下手くそだし、取り立てて体力があるわけでも頭がいいわけでもないじゃない。

おかざり以外のなんの役に立つのよ。

むっ。そんなことないもん!
「そんなことない」ですって? あなたそれ本気で言ってるの?
あなた今度の魔女集会、招待されてないじゃないの。
ドジな東の魔女イーストも呼ばれてるし、今回から参加するお菓子の魔女マカロンなんて、あなたより三つも年下なのに!
ぐぬぬ……。
まあ、賑やかしでよかったらお城のパーティ、せいぜい楽しんでくるのね。
おーっほっほっほ!
眠りの魔女ブランケットは、高笑いをして去っていきました。
はぁ……言い返せなかった……。
ブランケット、性格はあんなだけれど、魔法の腕は確かだもんなぁ。
それに比べて私は、この間も魔法のおなべを爆発させたばかりだし、ホウキも遅いし……。
りんごが赤くなるのは魔法じゃないしなぁ。
って! せっかくお城のパーティに招待されたのに、なんで暗くなってるんだろう!
こんなのダメダメ! 元気出さないと!
さて、何を着ていくか考えないと!

キュートでラブリーなの?

シックでエレガントなの??

それともちょっと奇をてらってカラフルポップなのとか?

やーん、私って本当何着ても似合って困っちゃう!

⋯⋯まあ、それしか取り柄ないんだけどさ⋯⋯。
って! だーかーらー暗くなるの禁止っ!

大丈夫大丈夫、きっとかわいいしか取り柄なくたって、何か輝けるところが見つかるんだから!

さーて、家に帰ってクローゼットを開けて、とっておきの服を選ばないとっ。
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登場人物紹介

【アプル】
ワンダーランドの片隅で暮らしている、りんごの魔女。
世界で二番目にかわいいけど、魔法の腕前はイマイチ。
かわいいことを生かして、自分らしくキラキラ輝きたいから、アイドルを目指します!

【ミスター・ミラー】

ホワイト城の物置きにあった、しゃべる魔法の鏡。

アプルにアイドルという存在を教え、

その後も時折アドバイスを伝える。

【カーレン】

赤いくつをはいた、ダンスが好きな少女。

両親を亡くしているが、ちょっとしたきっかけでメイド長の養子になる。

振付師としてアプルを支える。

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