振付師はじめます

文字数 1,098文字

お、お礼!? 気持ちはうれしいけど、私、別にカーレンのために逃げたわけじゃないよー。

それを言ったらアタシだってアプルを助けようとしたわけじゃないし。

それなのに、結局アタシばっかりトクして、アプルは王様から逃げ切っただけだろ?

うーん、そうとも言えるけど……。

あー、じゃあ、あれだ。お礼じゃなくて、幸せのおすそ分け!

それならいいだろ?

アプル。ここはご厚意に甘えたらよいのではないでしょうか?
うーん、ミスター・ミラーがそう言うなら……?
鏡がしゃべった!? すげーな。それ、アプルの魔法なのか?
うーん、私の魔法じゃないんだけど……詳しいことはよくわからないのよね。

ふーん……? まあ、訳アリっぽいなら詳しくは聞かないけど。

ところで、幸せのおすそ分けだけど、アプルは何かしてほしいことあるか?

小さいころからあちこちで働かされてたから、仕事の手伝いなら一通りなんでもできるつもりだけど。

仕事の手伝いかぁ……。私、最近アイドルっていうお仕事を始めたんだけど……。
あいどる……?
アイドルっていうのは、かわいい服を着て、歌って踊って、みんなにキラキラをおすそ分けする仕事なの!
そうか! じゃあアタシたち、おすそ分け仲間だな!
あは、ホントだ!

しっかし……かわいい服に歌って踊って……か。

アタシ、服なんか安物しか持ってなかったから、かわいい服なんてわかんねーし。

楽器がなくて音程もとれなかったから、歌もあんまり。

踊りだけは身体ひとつでできるから、仕事の合間にやってたんだけど……こんなんで役に立てるかなぁ。

それでは、アプルが踊るダンスの振り付けを考えてもらうというのはどうでしょうか?
踊りを考えるだけでいいのか?

ええ。アイドルが一般的な世界では、ダンスを考える人も立派なお仕事とされていますよ。

振付師なんて呼ばれているようですね。

ふりつけし⋯⋯。なぁ、その振付師ってヤツ、アタシなんかでもできるのかな?
ええ。カーレンほどのダンスの才能があれば十二分にございます。
よかったじゃない、カーレン。

ミスター・ミラーは嘘は言わないんだってさ。

ああ! よーし、何だかやる気がわいてきた!

さっそくダンスを考えるから、一曲歌ってくれよ!

ありがと、それじゃあ……!

フシギね 出会ったばかりなのに

ダンスシューズみたい おそろい ワンセット

二人ステキなキラキラ おすそ分けしに行くんだ

へぇ、すげーな、即興?
うん、なんとなくだけどね。
うーん、でも悪いな。やっぱりさすがにいきなり全部考えるのは無理だわ。

いいのいいの。私も歌のほう、ワンフレーズしかできてないから。

この先は二人で考えよう。

次のライブは来週の日曜日の予定だし、まだ時間があるから。

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登場人物紹介

【アプル】
ワンダーランドの片隅で暮らしている、りんごの魔女。
世界で二番目にかわいいけど、魔法の腕前はイマイチ。
かわいいことを生かして、自分らしくキラキラ輝きたいから、アイドルを目指します!

【ミスター・ミラー】

ホワイト城の物置きにあった、しゃべる魔法の鏡。

アプルにアイドルという存在を教え、

その後も時折アドバイスを伝える。

【カーレン】

赤いくつをはいた、ダンスが好きな少女。

両親を亡くしているが、ちょっとしたきっかけでメイド長の養子になる。

振付師としてアプルを支える。

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