振り付けと練習と

文字数 1,030文字

それから数日。アプルとカーレンは、毎日ダンスの練習に励んでいました。
カーレン、ここのステップはこうであってる?
うーん、ちょっと足を開きすぎ。ここは肩はばぐらいのほうがカッコイイんだよ!
あ、そっか。ありがと!
あ、そうだアプル。そこの次のところなんだけど、歌で言うとサビの伸びが入るところだったっけ?
うん、一番盛り上がるところだよ!
そっか、それならできるだけ背筋は伸ばして、声を出しやすい振り付けに変えたほうがいいかもな。

お二人とも、ダンスに熱中するのはかまいませんが、水分補給もお忘れなく。

お体に毒ですよ。

はーい、ミスター・ミラー、ありがとう。

あ、水分補給なら。今日はメイド長さんがカモミールティーを淹れてくれたんだ。

「アプルちゃんと一緒に仲良く飲みなさい」ってさ。

水筒に入れて持ってきたから、一緒に飲もう!

わぁ! カモミールって香りがりんごに似てるから、私、大好きなんだ!
ちょっと待って。この水筒、メイド長さんのお古だから、

ちょっと形がゆがんでてフタが固いんだよ⋯⋯!

よい――しょっと!

カーレンがえいと力を込めると、水筒のフタが外れました。

しかし、力を入れすぎたのか、外れたフタはカーレンの手をすり抜け、森の中に飛んでいってしまいました。

痛でっ!
やばっ。今誰かに当たったよな⁉

声したし!

今の声って⋯⋯もしかして⋯⋯
アプルとカーレンは水筒のフタを、そしてフタが当たってしまった誰かを探すために、森に入りました。
おンや、だれかと思えばアプルでねか……!
あ! やっぱりイーストだ!
アプルの知り合いか?

うん、東の魔女のイースト!

私とは落ちこぼれ魔女仲間……っていっても、イーストのほうがまだマシなんだけどね。

イースト、この子はカーレン。私がアイドルになるから、振付師をお願いしてるんだ。
あいどる……? ふりつけし……?
今はそれよりさぁ。こっちに水筒のフタが飛んでこなかったか?
ああ、この小っさいカップ、何かと思ったら水筒のフタだったのけ。

頭に落ちてきたから拾っておいたべ。ほい。

頭に⁉ それは悪かった!

痛くなかったか⁉

いンや、いつものことだから気にしないどくれ⋯⋯。
いつものこと⋯⋯?
イーストの頭の上には、いつもいろんなものが落ちてくるのよ。

なんでかはわからないんだけどね。

へー⋯⋯それは大変そう。
昔からだから、もう慣れちまったべ。
あ、そうだ。いつものことっていえば、今日はウェストはいっしょじゃないの?

いつもいっしょだよね?

ウェストは⋯⋯。
こらーっ! 待たんかーっ!
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登場人物紹介

【アプル】
ワンダーランドの片隅で暮らしている、りんごの魔女。
世界で二番目にかわいいけど、魔法の腕前はイマイチ。
かわいいことを生かして、自分らしくキラキラ輝きたいから、アイドルを目指します!

【ミスター・ミラー】

ホワイト城の物置きにあった、しゃべる魔法の鏡。

アプルにアイドルという存在を教え、

その後も時折アドバイスを伝える。

【カーレン】

赤いくつをはいた、ダンスが好きな少女。

両親を亡くしているが、ちょっとしたきっかけでメイド長の養子になる。

振付師としてアプルを支える。

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