アイドルへの第一歩

文字数 1,099文字

ふーん……つまり、アンタは、そこのミスター・ミラーに映った、アイドルとかいうのになりたいのね?
うん!
――バッカじゃないの!?
えええっ!? なんでそんなこと言うの!

あのねぇ。そんな何だかわからない鏡の言うこと、本当に信じるの?

ほかの世界なんてあるわけないじゃないの。


失敬な。鏡は真実のみを映すもの。決して嘘は申しません。

仮にほかの世界やアイドルが本当にあったとしても、

ほかの世界と同じことをここでやってうまくいく保証なんてないじゃないの。

う……それは確かに、そうかもだけど……。
ほらね。そんな無駄なことするより、素直にお飾り王妃様にでもなったほうが今後のためなんじゃないの?

ムッ。――私、絶対にあんな王様のお嫁さんになんかならないんだから!

そ。それなら何も言わないけれど。まあ、せいぜい無駄な努力をすればいいじゃない。

おーっほっほっほ!

ブランケットは高笑いしながら劇場を後にしました。
むっかー! 何よ、わざわざ嫌味を言いにきたの!?
寝ていたところを起こされて不機嫌だったのもあるのではないでしょうか……?

そうだとしても、あんな王様と結婚しろだなんて!

これはまた、ずいぶんとお怒りですね……。

私、まだまだ結婚するには若すぎるし、王様だっておじさんだし……

何より、王妃様が亡くなって一年経ったばかりで新しいお嫁さんを探すような人と結婚なんて絶対にイヤ!

ふむ、なるほど。アプルは王族という肩書に惑わされず、その人の内面を見る力があるようですね。
よくわからないけど……それって褒めてるの?
ええ、見た目のかわいさや美しさもさることながら、本当の輝きというのは内面から発せられるものですから。

――って、ちょっと! だから私はかわいい以外に取り柄ないんだってば。

それ、褒めてるように見せかけて結局けなしてない?

ふふふ、さて、どうでしょうね?
そんなこんなで、お昼ごろ。
よーし、掃除終わったー!!
お疲れ様です。

いやー、ボロボロの劇場だったけど、ちゃんと掃除すれば意外ときちんとなるものね!

ミスター・ミラーで見たアイドルの舞台には、まだまだキラキラが足りないけど、それでも初ライブには十分って感じ!

あとは着替えと集客ですね。
うん、そうだねっ。みんな来てくれるかなぁ?

普通は初回からそう集まるものでもないようですが……アプルはかわいいですからね。

それなりの集客は見込めるでしょう。

なんでそんな微妙によくないことを言うのよ……。

まあ、ミスター・ミラーが言うことなら本当なんでしょうけど。

ふふふふ、よくお分かりで。

まぁ、なんにせよ、その「それなり」のお客さんにも、最高に満足して帰ってもらいたいもの。

衣装選びもがんばらないと!

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登場人物紹介

【アプル】
ワンダーランドの片隅で暮らしている、りんごの魔女。
世界で二番目にかわいいけど、魔法の腕前はイマイチ。
かわいいことを生かして、自分らしくキラキラ輝きたいから、アイドルを目指します!

【ミスター・ミラー】

ホワイト城の物置きにあった、しゃべる魔法の鏡。

アプルにアイドルという存在を教え、

その後も時折アドバイスを伝える。

【カーレン】

赤いくつをはいた、ダンスが好きな少女。

両親を亡くしているが、ちょっとしたきっかけでメイド長の養子になる。

振付師としてアプルを支える。

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