世界で最初のアイドルライブ

文字数 1,083文字

さて……っと。
どう? 本当にこの格好でおかしくない?
ええ。とても似合っていますよ。私が言うのですから間違いありません。
真実を映す鏡だから嘘はつけない……だったっけ?
ええ。

うーん……まあ、今さら疑ってもしょうがないし。

信じることにする!

おや、アプルちゃん。どうしたんだい? そんなにおめかしして。

誰かとデートかい?

あっ。レーズンおばさん、こんにちは!

デートじゃなくて、今日はライブやるの!

らいぶ……?

ライブっていうのはね、舞台の上でアイドルが歌って踊る――って、説明するのはむずかしいなぁ。

とにかくちょっとしたら劇場に来て! 待ってるから!

ふーん? なんだか不思議なことを言うねぇ。

まあ、こんな田舎の村じゃあおもしろいこともないし、たまにはそういうのもいいだろう。

わかった、時間を作って行くよ。

ほんと!? ありがとー!
アプルちゃん、レーズンおばさん。どうしたの?
おや、ローズヒップ。アプルが劇場で何か面白いことをやるんだと。
面白いこと⋯⋯?
来ればわかるよー。
そう言われると気になるわね。私も見にいこうかしら。
ほんと⁉ 嬉しい!
みんなで集まって、どうしたんだい?
あっ、ピアお兄さん。あのねあのね――!
数十分後。
⋯⋯結局、お仕事で来れない人とブランケット以外、村の人がほとんど全員集まっちゃった⋯⋯。
私の予想以上とは。アプルの人をひき付ける力をあなどっていました。
ううう、これだけたくさん人がいると、なんだか緊張してくるなぁ⋯⋯。
はて。アプルほどかわいければ、注目されるのは慣れていらっしゃるかと思いましたが。
そりゃあすれ違う時にちょっと見られたりくらいはあるけど⋯⋯。

でもこんなにたくさんの人からいっぺんに注目されたことはないよ。

ふむ。笑顔には緊張をほぐす効果があると言われています。

どうでしょう、私に向かって笑ってみては。

そっか! ミスター・ミラーは魔法の鏡だけど、普通の鏡としても使えるものね。

私、やってみる。

(にこっ)
――うん、バッチリ!

それじゃあ、私、行ってくるね!

ミスター・ミラーを机に置いて、アプルはステージに進み出ました。

お客さんの視線がアプルに注がれます。

みんな、今日は来てくれてありがとー!
劇場いっぱいに、アプルの歌声がひびきます。

誰よりも輝きたいの

だってたった一人の私だもん

鏡のキラキラ受けて

ススメ! アイドルへ


魔法みたいなわくわく

魔法みたいなドキドキ

いっぱい集めて

いつかはきっとハッピーエンド


よくばり魔女だもの

もっともっとほしいな

地平線までとどけ歌声

よくばり魔女だもの

もっともっと輝け

わたしのミライ

以上、アイドル・アプルのファーストライブでしたー!
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登場人物紹介

【アプル】
ワンダーランドの片隅で暮らしている、りんごの魔女。
世界で二番目にかわいいけど、魔法の腕前はイマイチ。
かわいいことを生かして、自分らしくキラキラ輝きたいから、アイドルを目指します!

【ミスター・ミラー】

ホワイト城の物置きにあった、しゃべる魔法の鏡。

アプルにアイドルという存在を教え、

その後も時折アドバイスを伝える。

【カーレン】

赤いくつをはいた、ダンスが好きな少女。

両親を亡くしているが、ちょっとしたきっかけでメイド長の養子になる。

振付師としてアプルを支える。

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