赤いくつと悪い魔法
文字数 1,031文字
アプル！ あまり近寄ると危ない、逃げろ！
ううん、逃げない！ だってカーレンを助けないと！
くそ⋯⋯なんだってこんなことに⋯⋯⁉
フン。ちゃんと礼拝に集中していなかったから、神様の罰がくだったのさ。
（うそっ、神様ってよくわかんないけど、めちゃくちゃすごい人でしょ？
そんな人の罰なんて、落ちこぼれ魔女の私がどうやってなんとかしたらいいの⁉）
そ……そんな……！
そうこうしている間にも、カーレンの足はどんどん進み、町中を進んでいきます。
あー、やっぱマカロンのケーキが一番ウマいけど、この店のもなかなかやな！
とくにモンブランが最高だべなぁ。
うわ！ ちょ、ウェストとイースト、よけろ！
踊るカーレンの足が、ウェストとイーストがケーキを食べているテーブルを蹴り飛ばします。
たちまちテーブルはひっくり返り、食べかけのモンブランがイーストの頭にかかりました。
あうぅ〜。
ちょい、何さらしとんねんカーレン！
ごめん！ こんど弁償する！
それより今は靴が止まらないんだ！
カーレン、待ってってば！
だから待てって言われて待てないんだってば！
……あれ、どないしたんやろ。
心配だべなぁ。
カーレンはとうとう、町からも飛び出し、いばらの森の方へと進んでいきます。
だーれーかーとーめーてーくーれー！
うきゅきゅっ！
お前はいつかのいたずらリス！
うきゅーきゅーっ。
もしかして、カーレンのこと止めるつもりなんじゃない？
バカ！ お前には無理に決まってるだろ！ アタシのことはいいから逃げろ！
うきゅきゅっ！
リスはカーレンの足に飛びつき、どうにか押さえつけようとしますが、案の定弾き飛ばされてしまいます。
わわ！ キャッチキャッチ！
うきゅー……。
早く止めないといけないのはわかってるけど⋯⋯神様の罰なんて、どうすればいいの？
バカなことを言いなさんな。
――この声は、メイド長さん⁉
ふう、やれやれ。
なんや大さわぎやったから、ホウキで連れて来たでー！
んだ。
ウェストとイーストも！
アプル、魔女だから神様にくわしくないのは仕方ないとはいえ、滅多なことは言いなさんな。
神様があんなことするわけありゃしないよ。
えっ。
聞いた話じゃあ、カーレンが礼拝中にぼーっとしていたのはアプルのために踊りを考えていたんだろう？
友達のことを思う気持ちを神様がむげになんかするものかい。
ましてやカーレンを助けようとしたリスをけとばすなんて。
――あんなのが神様の罰なわけあるものかい。アレはきっと何かの魔法だよ。
――悪い魔法。それなら、私にもなんとかできるかも！
