ライブが終わったその夜は

文字数 1,124文字

その日の夜のことです。
あー、今日はドキドキしちゃって眠れそうにないなぁー。
寝ないとせっかくのかわいいパジャマがもったいないですよ。
だってだって! お客さんみんな、私のライブ見てキラキラしてた。

私、こんなの初めてだよ!

ふふふ、ファンができたのですね。
ふぁん⋯⋯? う⋯⋯うちわ⋯⋯?
アイドルの応援をする人のことをそう呼ぶのですよ。

そっか……ファンかぁ……!

ファンができるってとってもステキね!

ええ。アイドルにとって一番素敵なことは、周りの人たちにキラキラをあげることですからね。

ファンの皆様はアイドルからたくさんキラキラをもらった人なのですよ。

そっかぁ。ステキステキ!

取り柄のない私でも誰かをキラキラさせることができたってことだもんね。

えへへ、なんだか今日はよく眠れそう!

おや、さっきと言っていることが違いますが⋯⋯。
なんだか、ライブしてちゃんと意味あったんだなぁって思ったら安心しちゃって。
それはよかった。――さて、夜もふけてきました。

そろそろおやすみなさい。

はーい、おやすみなさーい。
アプルは部屋の灯りを消して、ベッドに潜り込みました。
(うーん⋯⋯、ここは、夢の中?)
(周りは⋯⋯真っ白? 何もない夢なんてヘンなの)
――アプル。アプル。
誰かいるの⁉
――ここですよ、アプル。
(――すごいイケメン! でも、誰だろう?)
こんばんは、アプル。ご機嫌麗しゅう。

えーと、こんばんは。夢に出てくるってことは、初めましてではないわよね。

夢には起きているときに知っていることしか出ないってブランケットが昔言ってたもの。

眠りの魔女が夢のことで嘘は言わないだろうし……。

ええ、その通り。初めましてではありませんね。さすがはアプルです。

でもごめんなさい。私、あなたが誰だか、全然覚えていないの。

ふふふ。大丈夫ですよ。私はあなたのファンの一人、ただそれだけです。

ファンの一人? そうなの? ありがとう、ファンになってくれて!
お礼を言うのはこちらですよ。アプルがたくさんキラキラした気持ちをわけてくれたおかげで、こうして夢に会いにくることができたのですから。
(――でも、今日のライブに来てくれた人って、みんなフルーツ村の人よね?

フルーツ村にこんな人、いたかしら⋯⋯?)

しかし――せっかくお会いできたのに、もう時間切れのようです。
えっ、もう行っちゃうの?
そんな不安そうな顔をなさらなくても、また会えますよ。

アプルがまたキラキラを集めてくれれば。

――待って! せめて名前を教えて!
そう叫ぶ自分の声で、アプルは目を覚ましたのです。
えっ、あ、あれ? もう朝?
おはようございます、アプル。

何やら夢を見ていたようですが⋯⋯。

えへへ、内容はナイショ!

さーて、今日もアイドル、がんばるぞー!

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登場人物紹介

【アプル】
ワンダーランドの片隅で暮らしている、りんごの魔女。
世界で二番目にかわいいけど、魔法の腕前はイマイチ。
かわいいことを生かして、自分らしくキラキラ輝きたいから、アイドルを目指します!

【ミスター・ミラー】

ホワイト城の物置きにあった、しゃべる魔法の鏡。

アプルにアイドルという存在を教え、

その後も時折アドバイスを伝える。

【カーレン】

赤いくつをはいた、ダンスが好きな少女。

両親を亡くしているが、ちょっとしたきっかけでメイド長の養子になる。

振付師としてアプルを支える。

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