パーティから逃げ出して

文字数 1,049文字

うむ? どうした? 顔色が優れないようじゃが……。

(このパーティって、もしかして新しい王妃様を決めるための、王様婚活パーティ!?

それでかわいいからって私が呼ばれたの!?

他の子たちはみんな玉のこし目当て!?

どどど、どうしよう。

私、まだ結婚なんてしたくないよ。それもこんなおじさんと……)

え、えっと。私、失礼します!
アプルは出口に向かって、ものすごいいきおいで走り出しました。
逃がすな、誰か、捕まえろ!
はっ!
きゃ! (ダメ、捕まる……!)
その時です。誰かの体が兵士にぶつかりました。
おっと。ごめんなさーい!
くそっ⋯⋯!
(今の子⋯⋯わざとぶつかって私を逃してくれたの?)
(わぁ、服は目立たないけど、赤いくつがとってもかわいい!)
(――って、そんなところ見てる場合じゃなかった!

逃げないと!)

アプルは一目散にドアを飛び出すと、出入り口の警備を避けて、二階へと駆け上がりました。
(ホウキがあるから二階からでも逃げられるって思ったけど⋯⋯この廊下、窓がない!)
いたか⁉
こっちにはいない!
さては二階に逃げたな⁉
わわわ、とりあえずどこかの部屋に逃げないと!

中に誰もいなそうなところは⋯⋯あのオンボロそうな扉なら多分大丈夫ね!

アプルは廊下の一番奥にある扉へと逃げ込みました。
げほげほっ、すごいホコリ!

誰もいないのはよかったけど⋯⋯ここって物置きじゃないの!

そこに誰かいるのですか?
きゃあ! 誰かいた⁉
アプルはあたりを見回しますが、そこには誰もいません。
気のせいかなぁ⋯⋯。
それにしても、物置きとはいえ、さすがお城ね!

豪華なものがいっぱいあるわ!

 
この鏡なんかすっごくキレイ。

やーん、こんなキレイな鏡で見ても、私のお肌ってすべすべ!

かわいすぎて困っちゃう!

(って、今は本当にかわいすぎて困ってるところだった⋯⋯)
そうですね。とてもかわいらしいですよ。
そう、ありがとー!
――って、鏡が喋ったぁぁぁ⁉
どうも、はじめまして。りんごの魔女アプル。

世界で二番目にかわいらしいあなたにお会いできて光栄です。

世界の二番目って、何よ、その中途半端なおせじは。
いえいえ、鏡は真実を映すもの。決してうそは申しません。
あれ、そういえばなんで私の名前を知ってるの?
なんでも映す魔法の鏡ですから。
なんでも映す魔法の鏡――!

その鏡が世界で二番目にかわいいって言うってことは、私って本当に世界で二番目にかわいいんだ!

やったー!

二階の廊下にもいないぞ?
どこか部屋の中に逃げ込んだかもしれない!
って、そんなことを言っている場合じゃなかった!

逃げないと!

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

【アプル】
ワンダーランドの片隅で暮らしている、りんごの魔女。
世界で二番目にかわいいけど、魔法の腕前はイマイチ。
かわいいことを生かして、自分らしくキラキラ輝きたいから、アイドルを目指します!

【ミスター・ミラー】

ホワイト城の物置きにあった、しゃべる魔法の鏡。

アプルにアイドルという存在を教え、

その後も時折アドバイスを伝える。

【カーレン】

赤いくつをはいた、ダンスが好きな少女。

両親を亡くしているが、ちょっとしたきっかけでメイド長の養子になる。

振付師としてアプルを支える。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色