第15話:テロ、やまゆり事件、トランプ大統領、イスラム国

文字数 2,055文字

 離脱後の関係は交渉の結果次第で大きく異なりそうだ。昨年に続き、世界各地で「イスラム国」など過激組織が関与したとみられるテロが相次いだ。7月にはバングラデシュの首都ダッカで、外国人に人気の飲食店が襲撃された。そして、人質20人が死亡する立てこもり事件が発生した。国際協力機構のインフラプロジェクトに携わっていた日本人男女7人も犠牲になった。

 ブリュッセルでは3月、空港などを狙った同時テロで30人以上が死亡した。7月にはフランス南部ニースで花火見物客にトラックが突入し86人が死亡した。日本では、7月26日未明、相模原市緑区の知的障害者施設「津久井やまゆり園」にナイフを持った男が侵入した。そして19~70歳の入所者男女19人を殺害、27人に重軽傷を負わせた

 。神奈川県警は殺人などの容疑で元職員植松聖容疑者を逮捕した。同容疑者は同施設に非常勤職員として勤務していた。しかし2月に「重度障害者を殺す」と話したため施設が県警に連絡、退職扱いとなった。妄想性障害などと診断され措置入院となったが、その後入院の必要性は消失したとされ3月に退院した。

 しかし逮捕後も「障害者は社会を不幸にする」「国が許可してくれなかったので仕方なくやった」などと常軌を逸した独善的主張を繰り返していた。そのため、横浜地検は9月以降鑑定留置して精神鑑定を行い刑事責任能力の有無を調べている。11月、米共和党のドナルド・トランプ氏が11月8日投開票の大統領選で、民主党のヒラリー・クリントン前国務長官を破る番狂わせを演じた。

 排外的主張を掲げ、暴言も辞さない実業家のトランプ氏は、既存政治への不満を吸い上げ「トランプ現象」を巻き起こし大衆迎合主義の台頭を印象付けた。トランプ氏は、メキシコ国境への壁の建設を柱とする不法移民対策を唱えた。さらに在日米軍の駐留経費の全額負担を求める考えも表明した。就任初日に実行する政策として環太平洋連携協定「TPP」からの離脱を挙げた。

 その後も「一つの中国」政策に縛られる必要はないと述べた。そして台湾の蔡英文総統と電話会談するなど型破りな言動を続けており米国の動向をめぐり不透明感が深まった。2020年以降の地球温暖化対策の新たな国際的枠組み「パリ協定」が11月4日発効。協定は、昨年末にパリで開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議で採択された。

 途上国を含む全ての条約加盟国が温室効果ガス削減に取り組み、産業革命前からの平均気温の上昇を2度未満に抑える目標を掲げる。批准国の温室ガス排出量が世界の総排出量の55%以上になることなどが発効要件だったが、2大排出国の米中が今年9月に批准した。その結果、採択から1年足らずのスピード発効となった。

 11月7~19日にモロッコで開かれたCOP22では、協定の実施ルールを18年に決めることで合意した。日本は11月8日に批准したが遅れが響き、批准国による第1回締約国会議に正式参加できなかった。こうして2017年が明けた。昨年の米大統領選で既存政治に不信を抱く白人労働者の心を捉え、予想外の勝利を収めた共和党のドナルド・トランプ氏が1月20日、第45代米大統領に就任した。

 トランプ氏は就任演説で「米国第一主義」を宣言し直後に環太平洋連携協定「TPP」からの離脱を指示した。国際協調を掲げたオバマ前政権からの様変わりは世界に衝撃を与えた。トランプ氏は地球温暖化対策の国際枠組み脱退も表明。内政ではイスラム圏からの入国禁止や国境の壁建設を打ち出した。ただ、幹部の解任が相次いだ。

 さらにトランプ氏とティラーソン国務長官の不和も伝えられるなど政権運営は不安定なままであった。ロシアがトランプ陣営と共謀し大統領選に介入した疑惑はフリン前大統領補佐官の訴追に発展し政権を揺るがした。2017年4月、猿島清子は、慶応義塾女子高校に入り新幹線で品川で降り三田の校舎に通い始めた。

 7月、日本人を含む外国人人質殺害事件や欧米諸国での大規模テロを引き起こして国際社会を震撼「しんかん」させた「イスラム国」に対し米軍主導の有志連合の支援を表明した。2017年、米軍主導の有志連合の支援を受けた地元勢力の作戦でイラクとシリアの大半で駆逐された。「イスラム国」の2大活動拠点だったイラク北部モスルとシリア北部ラッカも陥落し組織としては事実上崩壊した。

 「イスラム国」は14年、イラクとシリアで急速に伸長した。指導者バグダディ容疑者はイスラム教の預言者ムハンマドの代理人「カリフ」と称し一時は両国にまたがる広大な地域を支配する疑似国家を構築、恐怖支配体制を敷いた。異なる宗教・宗派や文化を敵視する「イスラム国」の過激思想は現在も拡散したままで世界各地で共鳴者によるテロの脅威が続いた。

 7月5~6日を中心に台風3号と梅雨前線の影響で「九州北部豪雨」が発生し福岡、大分両県で死者38人、行方不明者3人となった。3号は九州北部を横断し気象庁は5日に両県に大雨特別警報を発表した。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み