第1話:出産後、病死した最愛の妻と忘れ形見

文字数 2,069文字

 猿島義彦の実家は、三重県鈴鹿市西庄内町の八島川のほとりのお茶農家。近所の宮越清美は、1974年12月11日に生まれた。猿島義彦は、1974年9月25日に誕生。温暖な気候と西部地域の土壌に恵まれた自然環境の中で香り高く上質な煎茶と玉露の味わいをもつと言われる「かぶせ茶」を主に生産していた。

 自宅で飼っている鶏の卵、鶏肉を販売して家計の足しにして生活していた。現金収入は、何とか食べていける程度の零細農家であった。そのため、父の宮腰吉信、母、共恵は、空いてる時間、大きな農家で野良仕事の手伝いもしていた。鳥小屋の管理と鶏卵の販売、鶏肉さばいていた。

 茶摘みの季節になれば近所のお茶農家の手伝いをしていた。子供たちは、地元の小学校を出て中学に通い1990年4月、宮越清美は、四日市商業高校へ、同年、猿島義彦は、鈴鹿高専電子科に入学した。その後、宮越清美は、1993年鈴鹿商業高校を卒業して鈴鹿市の信用金庫に務めた。

 一方、猿島義彦は、1995年に名古屋のシステムリソース社に入社した。休みの日、宮越が名古屋に出かけ映画を見にいったり、喫茶店で2人で話をしたりして付き合いを続けた。やがて宮越清美と猿島義彦は、1998年4月に結婚。その後、宮越清美が、2001年2月9日、妊娠が判明。

 2001年8月5日予定日と告げられた。しかし清美は、2000年7月5日、通っている産婦人科で妊娠高血圧腎症と診断され鈴鹿病院に入院した。2000年8月5日、出産後、頭痛と極度の高血圧が見られた。そして心配のせいか不安で錯乱状態になり懸命の治療にも関わらず、出産14日後、帰らぬ人となった。

「まるで明るい灯りをともして人々を楽しませて死んでしまうホタルの様だった」
「猿島義彦は、清美が、不憫なので骨の小片を、もらい桐箱に入れ保存した」
「幸いに誕生した娘は、無事であり乳児用ミルクを飲んで元気に育った」
「でも、この現実を受け入れられず、猿島義彦は、悶々と過ごした」
「妻の忌休後も立ち直れず5日間も会社を休んだ」

「猿島義彦の母の恵子は、清美さんがあまりにも不憫に思えてならなかった」
「そのため、生まれてきた女の赤ちゃんの名前を亡き清美さんから一文字を取って清子と名付ける様に義彦に進言した」
「猿島仁美さんは生まれてきた猿島清子を自分の命に代えても元気に育てようと固く決心した」
「宮越家の両親は、呆然自失となり何も手につかなくなった」

「猿島の父は、亡き清美さんの葬儀を内輪だけで行い彼女を猿島家のお墓に埋葬」
 こうして8月が終わり秋風が吹き10,11、12月が過ぎて2001年へ。
「しかし義彦は、娘を見ると亡き清美さんを思い出して涙がこみ上げ来た」
「でも義彦は、娘の清子を亡き清美さんの生まれ変わりと考えて大事に育てた」
「母も冬には、風邪をひかない様に部屋を暖かくして清子の面倒を見た」

「猿島は、直属の上司に、この話をすると極力早く帰れる様に配慮してくれた」
「しかし、この頃、猿島は、娘の清子にしっかりと教育を受けさせよう決心した」
「その教育資金をつくるためにインターネット証券会社に口座を開いた」
「その後、投資を始めようと考え、貯めた300万円を入金した」
「この頃、猿島は、以前、急騰したヤフー株を買おうと株価の下落を待った」

 そして2001年9月4日、早朝、ヤフーの気配値が、182万円と安いのを見て1株、買い注文を出した。昼休みに会社のパソコンで確認すると1株182万円で買え残金が118万円となった。9月11日、ニューヨークにワールドセンターの北棟と南棟に旅客機が、突っ込んだ。

 さらにアメリカ国防総省「ペンタゴン」にも旅客機が突っ込む同時多発テロが起きた。このテロによる犠牲者は合計3062名に上り、邦人死者・行方不明者は24名、そのうち遺体が確認されたのは9名であった。
「亡き清美の忘れ形見、宮越清子が1歳になると母に似て、愛おしさが増した」

「そして不思議な感じを抱きながら面倒を見ていった」
「いろいろ考えた末、清美が、永久に清子として生きてると思う事に決めた」
「こうして冬になり風邪をひかない様に注意していた」
「しかし、くしゃみをし始め、急いで医者に行った」
「宮越清子は、治療して数日で熱が下がり、元気を取り戻した」

 やがて、2002年となった。初詣に実家から近い椿大神社に両親と娘の清子の4人で出かけた。そして、家内安全、清子の成長、投資の成功を祈願してきた。清子の面倒は、祖母の猿島恵子が見てくれ、可愛がってくれた。そして、すっかり、おばあちゃん子になった。おばあちゃんの顔が、見えないと清子は、直ぐに泣き出した。

 そして、ハイハイして、おばあちゃんを探し回る姿が、実に可愛いので、何枚も写真を撮った。こうして2003年となった。今年も実家から近い椿大神社に初詣に両親と娘の清子の4人で出かけた。そして家内安全、清子の成長、投資の成功を祈願してきた。少しずつ猿島清子が、伝い歩きをし始めた。やがて暖かくなり4月ついに猿島清子が、一人で歩き始めた。
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