髪の毛。

文字数 691文字

 太陽の光で目が覚めた。だるい上半身を起こす。そして恐る恐る後ろを振り返る。
「やっぱり……」
 髪の毛が抜けていた。白い枕に黒く長い私の髪の毛が何本も落ちている。
自分の髪の毛をとかすように触ると、案の定。
やっと人並みに伸びた髪の毛は簡単に抜け落ちる。
 私はこういう時、男に生まれたかったとそう思う。
「うん?」
 ベッドの上が少し揺れた感じがした。
よく見ると、寝る前に枕元に置いておいたスマートフォンに通知のバイブが来たようだった。

 スマートフォンを開くと、その通知はTalkmanのフォロー通知だった。
「一体誰だろう……」
 その時病室のドアがノックされ、ドアが開いた。ナースの長澤さんが朝ごはんを運びに来たのだ。
「美波ちゃん。食欲ないかもだけど、少しでも食べてね?」
 長澤さんは心配そうに私に声をかけてくれた。
 そして再びドアの方まで行くと私に手を振り、そのまま部屋を後に。

しかしドアが閉まる様子はなく、続いて入ってきたのは楓。その楓を見ると髪の毛が少し跳ねていた。

「おっはよ!!」
「おはよう。楓少し髪の毛跳ねてるよ?」
「え!! 恥ずかしい」
 楓は少し顔を赤らめた。
 そして椅子に座るとピンクのリュックサックから鏡を取り出すとその場で直し始めた。
「いいなぁ……」
「え? なんか言った?」
「あ、いや、なんでもないよ」
 危ない危ない……。

 開きっぱなしのドアにふと目をやると阿達先生が部屋に入ろうとしている最中だった。
「あ、阿達先生が来たってことは、私も行かなくちゃ、遅刻しちゃう」
 楓はすぐに荷物をまとめると阿達先生に一礼してそのまま病室を後にした。


 そして今日も昨日と同じ一日が始まる。
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登場人物紹介

香西美波(かさいみなみ)

白血病の女子高生。

Talkmanのアイコン画像は羊。

小南透人(こなみゆきと)

病気の高校生

Talkmanのアイコン画像はロボット。

秋谷楓(あきたにかえで)

主人公(香西美波)の親友。

Talkmanのアイコン画像は黒猫。

阿達先生

主人公の担当医。

長澤

主人公が入院している病院のナース。

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