三ヶ月経って。

文字数 854文字

 あの日から三ヶ月経ち季節は冬。
 病院のベッドから見えた秋の紅葉は散ってその代わりに冷たい風が吹いている。

 あの日以来、透人君はよく私の病室へ遊びに来てくれるようになった。礼儀正しい透人君を私の両親と楓も気に入ってくれている。
 少し変わったことは透人君が一ヶ月前に退院したこと。
学校の制服や私服で病室に来る透人君はとても新鮮で尚更カッコよく思え、好きの気持ちがさらにつのっていく。

 私の治療についてはというと治る気配は未だ見えない。両親が担当医の阿達先生にお願いして色々な薬を試して貰ったがまったく効果がなかった。
「透人君……。私のこんな姿見せたくないな……」
 私は日々の抗がん治療で髪の毛がどんどんと抜けていた。今ではニット帽が欠かせずにいる。
「そんなの気にすることないよ!! 美波ちゃんへの気持ちは変わらないからさ」
 透人君はそう言いながら恥ずかしそうに頬をかいた。
「このまま、透人君と一緒にいえるならいいのに……」
「美波。そんな悲しいこと言わないでよ。一緒に頑張るって決めたじゃん」
「え……今美波って呼び捨てにしてくれた?」
 私は久しぶりに興奮混じりにそう聞いた。とても嬉しくて。
「あ、ごめん!!」
「ううん。その方がいいよ」
「う、うん。美波」
「透人」
 私と透人から笑みが溢れた。私の生きている世界に色んな色を透人は彩ってくれる。

 なんで人生って上手いこと行かないんだろう。
両親が担当医に呼ばれて、二度目の宣告。これ以上の治療は娘さんを傷つけるだけ。

 私にそれを伝えてくれた両親は、少し仲が良くなったみたい。私のことを二人とも第一に考えてくれてたみたいだからそれがうまい方向にいったんだと勝手に思う。

 阿達先生のその話を伝えてくれた両親は涙を目に溜め込んでた。けど、私は前に宣告された時ほど辛くはなかった。隣にいた透人は少し目に涙を浮かべてたけど。

 今はこれ以上の幸せなんてないって思う。素敵な両親がいて、仲のいい親友の楓がいる。そして、大好きな透人が。これだけで、もう人生生きてきてよかったって思えた。
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登場人物紹介

香西美波(かさいみなみ)

白血病の女子高生。

Talkmanのアイコン画像は羊。

小南透人(こなみゆきと)

病気の高校生

Talkmanのアイコン画像はロボット。

秋谷楓(あきたにかえで)

主人公(香西美波)の親友。

Talkmanのアイコン画像は黒猫。

阿達先生

主人公の担当医。

長澤

主人公が入院している病院のナース。

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