彼のこと。

文字数 1,265文字

 「ええ!!!!」
 楓の声が病室内に響き渡る。唯一の救いは窓を開けていたこと。そのため楓の声は外へ漏れることなく、窓の外へ。
「ちょっと、ここ病院だからね?」
「ごめんごめん、でも驚いちゃってさ」
 そう、私は透人君のことを、学校帰りに寄ってくれた楓に話したのだ。
「それにしても、私より早く彼氏が出来るなんてな、お主やるのぉ」
 楓はそう言うと嬉しそうにニヤニヤとした表情を私に見せる。
「いやいや、彼氏じゃないからね?」
「どんな彼氏か確認しよっと!!」
 楓はそう言うとTalkmanを開く。そして私のプロフィールからフォロワー欄を確認、小南透人のページへ。
「ふむふむ。プロフィール見る限り真面目そうだね!!」
「あれ、てかなんかトーク出してるよ?」
「うん?」
「ほら」
 楓はそう言うと私にスマートフォンの画面を見せる。
 私も自分のスマートフォンを起動しTalkmanを開き小南透人のホームへ。それは小南透人のホーム画面で、つい一分ほど前にトークを投稿していた。
『今日はグループ療法だった。僕と同じように色々な問題でPTSDになってしまった人がいることが分かって少し楽になったかな……』
 その時バイブ音が私の手を伝う。それは小南透人からのメッセージだった。
『今終わりました。お待たせしてすいません』
「返信してあげなよ。私はもう遅いから帰るし。お二人のお邪魔はしないからさ」
 楓は私のことをジロジロと楽しそうに見つめるとそう言う。
「だからそんなんじゃないからね!! でも気をつけて帰ってね」
「うん!! また明日!!」
 楓が病室を出ると、私はすぐに透人君にメッセージを返す。
『お疲れ様でした。ホームのトークも見ましたよ』
『ありがとうございます!! 僕友人が少ないので、こうやってトークを発信しているんですよ』
『そうなんですね。私も友達が多い方ではなくて、このTalkmanも友達に誘われて始めてみたんです。家族もお見舞いには、たまにしかこなくて』
『なるほど。ではその友達に感謝しないと。こうやって美波さんとお話出来ているので』
『そう言って頂いてありがとうございます。透人さんの家族などはお見舞いに来たりするんですか?』
 また間が空いた。もしかして聞いてはいけなかったのかも……。
 五分ほど経つとようやく返事が返ってきた。
『僕は父と母と妹が居たんですが、事故で全員亡くなってしまいました。僕だけが唯一生き残ってしまって……それが原因でPTSDになってしまいまして^^;』
『そうだったんですね……申し訳ありません。知らなくて、、』
『大丈夫ですよ!! 気にしないでください。楽しいお話をしましょう』

 私と透人君はこの後メッセージを送りあった。
それは私が一旦退院するまでの二ヶ月間も続いた。

 何度も話すうちに小南透人の事について詳しいことが分かってきた。
 小南透人は高校三年生で、家族を亡くした交通事故が原因でPTSDに。しばらく事故の怪我の治療で入院していたが、やがてPTSDが判明しその後継続して入院している。治療費は事故での保険金で賄われているそう。


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登場人物紹介

香西美波(かさいみなみ)

白血病の女子高生。

Talkmanのアイコン画像は羊。

小南透人(こなみゆきと)

病気の高校生

Talkmanのアイコン画像はロボット。

秋谷楓(あきたにかえで)

主人公(香西美波)の親友。

Talkmanのアイコン画像は黒猫。

阿達先生

主人公の担当医。

長澤

主人公が入院している病院のナース。

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