はじめての対話

文字数 854文字

 太陽ももう落ちて代わりに月明かりが部屋を照らしている。
 もう気づけば夜に。透人君からあのメッセージが来てから、私はほとんど上の空。担当医の阿達先生やナースの長澤さん、それに親友の楓の話も当然上の空。
 楓からはTalkmanのアップデートの話が振られたっけな。
 そして待ちに待った透人君からのメッセージがきた。
『今から電話出来るかな?』
「なんか、緊張してきた……よし」
『うん!大丈夫』
『そうだ!!どうせならテレビ電話しようよ』
「え!!」
 やばい、夜なのに大きな声を出しちゃった。私は少し慌ててしまった。
『ちょっと待ってて』
 私はそうメッセージを送ると、急いでボサボサの髪を直そうと灯りをつけた。
「まだ化学療法してなくてよかった」
 私はその時心底そう思った。
 急いで鏡を見てクシで髪の毛を直した。
『いいよ!お待たせ!』
 メッセージを送り既読が付くと、スマートフォンに振動が、メッセージ画面からいきなし通話マークが表示された。私は決心してそれをタッチ。

 スマートフォンには小南透人君の顔が写っている。
プロフィールにあった紹介文の通り真面目そうな高校生って感じがする。ちょっとカッコイイかも。でもテレビ通話となると本当に緊張する。
「えーと……初めまして。美波さん」
 透人君は緊張からか顔が固くなっている。動画は暗かったが向こうが机の上に置いてある灯りをつけているお陰で表情がよく分かった。
 でも、ちゃんからさんになってる……緊張してるのかな。
「は、、初めまして。透人さん」
 あ、私も君からさんになっちゃった……私も緊張してたんだった。
「あれ、美波さん、君からさんになっちゃってるよ? もしかして緊張してますか?」
「それは透人さんも同じだよ」
 その時私と透人君に自然と笑みが漏れた。


 その後は毎日メッセージをやり取りしているように自然に会話出来た。楓以外の人と話していて笑ったのは本当に久しぶりだった。初めて見た透人君の顔は私の目にしっかりと焼き付いた。透人君もそうだったらいいな、なんて女の子みたいなこと考えてた。

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登場人物紹介

香西美波(かさいみなみ)

白血病の女子高生。

Talkmanのアイコン画像は羊。

小南透人(こなみゆきと)

病気の高校生

Talkmanのアイコン画像はロボット。

秋谷楓(あきたにかえで)

主人公(香西美波)の親友。

Talkmanのアイコン画像は黒猫。

阿達先生

主人公の担当医。

長澤

主人公が入院している病院のナース。

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