初めての。

文字数 512文字

 私達は毎晩のようにテレビ電話をした。
 化学療法が始まってからは少し気が引けちゃったけど、透人君は「そんなの全然気にしないから、美波ちゃんと話せない方が辛いよ」って言ってくれた。

 そして今日の夜も通話。
「こんばんは」
「美波ちゃん。こんばんは」
「そう言えば、透人君の住んでるところ聞いたことなかったよね? どこに住んでるの?」
「僕は東京だよ!!」
「え!! 私も……」
「えー!! そうなんだ!! なんか凄いね」
 透人君はそう言うと笑みがこぼれた。
私はというと心臓がドキドキしていた。
「もしかしたら同じ病院だったりするかもね!」

「私……常泉大学病院だよ」
「え……。凄い!! 僕も常泉大学病院。え、え、美波ちゃんは何階なの?」
「私は七階の706だよ!透人君は?」
「え!! ほんとに凄い……僕は八階の806!! 怪我が治ってから精神科のフロアに移ったんだよ!!」
 ほんとに凄い……。テレビ電話で見える透人君は少し興奮気味でそれでいて嬉しそうに笑顔を私に向けてくる。
「僕達もしかして運命なのかもね!!」

 なんの恥ずかしげもなくそう言った彼に私はドキッとした。
 その時、透人君への想いが恋なんだと初めて知った。



 初めて、人を好きになった。

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登場人物紹介

香西美波(かさいみなみ)

白血病の女子高生。

Talkmanのアイコン画像は羊。

小南透人(こなみゆきと)

病気の高校生

Talkmanのアイコン画像はロボット。

秋谷楓(あきたにかえで)

主人公(香西美波)の親友。

Talkmanのアイコン画像は黒猫。

阿達先生

主人公の担当医。

長澤

主人公が入院している病院のナース。

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