小南透人の話
文字数 1,672文字
透人君は私を気にかけるように優しい声でそう囁く。
みなみって私と同じ名前……。
「高速道路に入って一時間くらい走ってたんだ……。
道路に掲示板が立ってて、そこに逆走車両アリっていう注意勧告が表示されてた。
少しすると後ろからパトカーのサイレンも聞こえてきたんだ。
その時、前から物凄いスピードで走ってくるスポーツカーがあった。
僕らが乗ってた車はその車と正面衝突……」
道路に掲示板が立ってて、そこに逆走車両アリっていう注意勧告が表示されてた。
少しすると後ろからパトカーのサイレンも聞こえてきたんだ。
その時、前から物凄いスピードで走ってくるスポーツカーがあった。
僕らが乗ってた車はその車と正面衝突……」
透人君の声が曇った……。涙をすするようなそんな声になっていた。
私は布団から出て、透人君の顔を見つめた。彼の涙が私のベッドに落ちていた。
「ううん。話したいんだ……。
車は前からの強い衝撃で両車とも大破した。
前に座ってた父と母は即死……。
隣に座っていた、まだ小学二年生のみなみは大破した車の中で苦しんでた。
一瞬とはいえ目の前で両親が死ぬのを見たんだ……。
みなみの額からは血が溢れてた……」
車は前からの強い衝撃で両車とも大破した。
前に座ってた父と母は即死……。
隣に座っていた、まだ小学二年生のみなみは大破した車の中で苦しんでた。
一瞬とはいえ目の前で両親が死ぬのを見たんだ……。
みなみの額からは血が溢れてた……」
私は目に涙が浮かび、その涙はそのまま落ちた。
「目が覚めたら、この病院にいた。僕は全身包帯だらけ。
そこで両親とみなみの死を知った……。
その時、今の美波ちゃんと同じようになったんだ。
あの時手を伸ばせば助けられたのかななんて馬鹿なことばっか考えるんだ……妹の声は僕に助けを求めてた。
きっと……みなみは自分が死ぬことが分かってた……
僕に辛い思いをさせないように痛いのに、苦しいのに笑顔を作って見せたんだ」
そこで両親とみなみの死を知った……。
その時、今の美波ちゃんと同じようになったんだ。
あの時手を伸ばせば助けられたのかななんて馬鹿なことばっか考えるんだ……妹の声は僕に助けを求めてた。
きっと……みなみは自分が死ぬことが分かってた……
僕に辛い思いをさせないように痛いのに、苦しいのに笑顔を作って見せたんだ」
透人君はそう言って涙を拭った。
「逆走してきた車の運転手は奇跡的に無事だったって聞いた。
運転手は若い男で逆走していた理由が楽しそうだと思ったから……。
僕は殺してやりたいって毎日そう思った……。
全身の怪我で全く動けなかったから余計にその気持ちは強くなった。
本当に辛かった。
それから逃げるために僕はTalkmanってアプリを始めた。僕みたいな辛い思いをしている人を探したかった……」
運転手は若い男で逆走していた理由が楽しそうだと思ったから……。
僕は殺してやりたいって毎日そう思った……。
全身の怪我で全く動けなかったから余計にその気持ちは強くなった。
本当に辛かった。
それから逃げるために僕はTalkmanってアプリを始めた。僕みたいな辛い思いをしている人を探したかった……」
透人君はそう言うと自分のスマートフォンを出し、Talkmanを開いた。そしてある画面を私に見せた。それは私のプロフィール画面。そこには楓と前に撮った写真がプロフィールに載せられている。
「君のアイコン画像はとても楽しそうにしている写真だった。
前に精神科の先生に言われたんだ……。
未来に希望を持つためには楽しかったことを思い出せるようにしないとって……
それに君のプロフィールには病気に打ち勝ってやるって強い想いがあった。僕は君が羨ましかった……。
僕はこのまま生きていけるかもしれない……
前に精神科の先生に言われたんだ……。
未来に希望を持つためには楽しかったことを思い出せるようにしないとって……
それに君のプロフィールには病気に打ち勝ってやるって強い想いがあった。僕は君が羨ましかった……。
僕はこのまま生きていけるかもしれない……
けど、君は白血病……死んでしまう可能性だってあるのに何でこんなにも前向きでいられるのか……だから僕は君が知りたかった」
私の目から大量の涙が溢れ出た。もちろんそれは嬉し涙。
私は彼の胸で泣いた。
その後何があったんだっけ。そうだ……私は余命を告げられて自宅療養になるはずだったけど自分で希望して治療を続けられるよう頼んだ。少しでも長く生きるために。
だから一ヶ月後の今も私はここにいる。