突然の来訪者

文字数 947文字

 何も手につかない。スマートフォンが何度も振動する。きっとTalkmanの通知、それも好きな透人君からの。
 それよりも先に考えてしまう死の恐怖。

 楓が来た。声で分かった。私は布団の中。
「美波……美波のお母さんから聞いた……。どうやったら助けられるのかなぁ……」
 布団の中から楓の泣き声が聞こえる……。私はなけないよ……さ。涙は楓が来る前に全部枯れちゃったから……。

 一時間くらいいたのかな……。楓は帰っていった。私はようやく布団から出た……。外を見るともう暗くなっていた。
「私、死ぬんだなぁ……」
 独り言。誰も私の声を聞いている人はいない。
でも、自分の死に向き合えた分少しは冷静になったのかな……。

 また通知音。私は少しスマートフォンを見てみた。
案の定、透人君から。私はそのメッセージを開いてみる。
『美波ちゃん! 何かあった?』
『おーい。』
『なにか悪いことしちゃったかな……』
 返事しないと……既読無視したら……嫌われちゃう……。

    でもどうせ、半年後には私はもういない……。

「うん? またメッセージが……」
『今から病室抜け出して行く。』
「え……」
 こんな顔なのに……。会える訳ない……。
それにもう夜の十時……。


 その時病室のドアがノックされた……私が答える間もなく、ドアが開いた。
 ドアの向こうにいたのは私と同じこの病院の入院着を来た男性。
 私に気づくとどんどん近付いてくる。
「美波ちゃん……」
 この声は毎晩電話してた優しい声だ……。
 
「美波ちゃん……どうしたの……」
「私さ。半年後には死んでいなくなっちゃうんだって!!……バカみたいだよね……」
「そんな……無理に笑顔になることないよ……そんなの美波ちゃんが辛いだけだよ」
   私は泣き顔を見せたくなくて、思わず布団に顔を埋めた。
「どうせ……私死ぬんだ……」
「美波ちゃん、分かるよ……今凄く辛いよね……」
 分かるわけない……PTSDは命にかかわる病気じゃないんだもん……。
「美波ちゃんの気持ちは分かる……僕でよかったら何でも話聞くから……だから」
「分かるわけない!!」
 私は布団の中からそう叫んでしまった……。違う私はそんなこと言いたかったんじゃない……。

   私は最低な女だ……。

 その時私のベッドに何かが座った感触が。もちろん透人君。

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登場人物紹介

香西美波(かさいみなみ)

白血病の女子高生。

Talkmanのアイコン画像は羊。

小南透人(こなみゆきと)

病気の高校生

Talkmanのアイコン画像はロボット。

秋谷楓(あきたにかえで)

主人公(香西美波)の親友。

Talkmanのアイコン画像は黒猫。

阿達先生

主人公の担当医。

長澤

主人公が入院している病院のナース。

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