小さなクリスマス

文字数 1,216文字

    12月25日。外の世界ではクリスマスが行われてる。

でも、病院の中にももちろんクリスマスはある。

このクリスマスのイベントに備えて私はウィッグを被っていた。

そして私はまだ慣れない車椅子を動かして廊下に出た。

「美波ー!!」

    クリスマス用に装飾された廊下を駆けてきたのは楓。楓はサンタの帽子を頭に被っていた。

その横にはトナカイの着ぐるみを着た透人君がいる。

    病院のクリスマスイベントの参加条件にクリスマスに関する仮装をすることってあったからかな。でも、クリスマスイベントはもちろん小さな子供用のイベントなんだけど。

「もうー。クリスマスだからって病院の廊下は走っちゃダメじゃん。相変わらずだなぁ」
「あっ、そうか、ごめんごめん」
「こんばんわ美波ちゃん」
    透人は少し照れくさそうに頬を赤く染めながらそう言った。
「こんばんわ!トナカイ可愛いいね!!」

「もうお熱いねーお二人さん!!」


「もう。そういうのいいから。というか楓何持ってるの?」
「あ!! そうだそうだ。美波ちょっと来てー!! 小南君はそこでちょっと待ってて!!」
    楓はそう言うと私の乗る車椅子を押して、そのまま病室の中へ。
「え。これ私が着るの?」
「そうだよー!!」
    楓にされるがまま、私は楓の持ってきた衣装を着た。


「うんうんすごく似合ってるよ!!」

    楓は笑顔でそう言うと私の車椅子を押して病室を出た。
「おかえり。おっ」
    透人は私の格好を見て驚きの表情を見せた。
「ど……どうかな」
「凄い似合ってる!! 可愛いよ!!」
「ほんと!? ありがと」
「じゃあ!お二人さん行ってらっしゃい!!」

    楓はそう言いながら透人君の後ろへ回り、背中を押した。

そして私に頑張れとジェスチャーしてそのまま去っていった。

「美波ちゃん、じゃあ行こうか」
「うん!!」

    私は透人に車椅子を押されて、病院のエントランスへ向かった。


    サンタさんが、トナカイに押されて進むなんて、逆だよね。

「ほら。着いたよ」


    透人に言われて指差した方向を見た。

    2m程しかないクリスマスツリーがそこにはあった。 クリスマスツリーには色んな装飾がされていて、とても色鮮やかで綺麗だった。


    周りには病院に入院してる子供がたくさん集まっている。みんなサンタさんの服やトナカイのカチューシャとかを頭につけてとても楽しそうだ。

「綺麗だなぁ」
「そうだね」
    私の後ろから大好きな彼の優しい声が聞こえる。
「こんな幸せなの私、初めてかもしれない」
「僕もだよ」
「でも……来年は、もっと大きなクリスマスツリーが見たいなぁ」
「……そうだね。一緒に見よう!!」
「うん……」
   その時、透人君は私の目の前に回り込んだ。そして私の顔を見つめた。涙で溢れそうなその瞳で私をじっとじっと見つめてる。
「美波。約束だよ」
「うん!!」
    私は透人と指きりを交わした。守れない約束を交わした。
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登場人物紹介

香西美波(かさいみなみ)

白血病の女子高生。

Talkmanのアイコン画像は羊。

小南透人(こなみゆきと)

病気の高校生

Talkmanのアイコン画像はロボット。

秋谷楓(あきたにかえで)

主人公(香西美波)の親友。

Talkmanのアイコン画像は黒猫。

阿達先生

主人公の担当医。

長澤

主人公が入院している病院のナース。

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