第31話 絶望

文字数 1,810文字

愛理の放った絶光を防ぐ人型の怪人は、両腕の刀で防いでいた。 愛理の絶光を防ぐ人型の怪人は、少しずつ後ろに下がるほどに押されつつあるようである。

「まだ……まだ負けない! 私はお前を倒す!」

愛理は前に少しずつ進みながら、絶光を放ち続ける。 その攻撃を受け続ける人型の怪人は、足に力をいれて前に進み始めていた。

「コノ攻撃ハモウキカナイゾ」

愛理の絶光では腕を吹き飛ばすことも、身体を傷つけることもまだできないようである。 そのためか、人型の怪人は防御をすることをやめて愛理の絶光を身体で受け止めながら愛理の方へ歩き続けていた。

「そんな!? 私の絶光が……!」

愛理は絶光を放ちながら顔を歪めて、私の攻撃が効果がないと唖然とした顔をしていた。 しかし、私が負けたら葵や皆が殺されちゃうと何度も呟いていた。

「私は負けない! 負けられないんだ!」

愛理はそう叫びながら、左手を前に出して絶光を放つ。 人型の怪人はまさか両手で絶光を放つとは思わなかったのか、一瞬驚いたが、身体で受けても消滅はしないと感知したのか、そのまま愛理のもとに歩くのを進める。

愛理は両手で放っている絶光に力を込めて、さらに出力を上げることにした。 しかし、それでも自身の魔法では人型の怪人にダメージを与えることは未だにできない。 愛理たちが戦っている最中、その様子はテレビ中継をされていた。

愛理の戦う姿や、葵や特殊魔法部隊との戦いもテレビ中継をされていた。 怪人の脅威や、特殊魔法部隊でも苦戦をする怪人との戦いにおいて、魔法学校の生徒が戦っている姿が全国中継をされていて、その苦戦する姿や、怪我を負いながらも戦う姿に涙する人たちで溢れたという。

愛理はテレビ中継をされていることや、泣いている人など知る由もない。 愛理は、今自身に出来ることとして目の前の人型の怪人を倒したい、倒して皆を救うんだということしか考えていなかった。

「これでもダメなの!? 私の魔力を全部持っていって!」

魔力をすべて使う覚悟で絶光を打ち続けていると、次第に出力が上がってきたのか、人型の怪人の歩くスピードが遅くなってきていた。

「ワルアガキをしたところで、お前はココデシヌんだ」

一歩ずつ愛理のもとに歩いてきた人型の怪人は、ついに愛理の目の前に到着した。 絶光を受けながらも微動だにせずに愛理の前に立ち続ける人型の怪人は、表情一つ変えずに、右腕の刀で愛理の腹部を貫いた。 愛理の腹部が刀によって貫かれた姿を見た葵や他の生徒や教師たちは愛理の名前を叫び、特殊魔法部隊の人たちは守れなかったと嘆いていた。

テレビ中継を見ていた視聴者たちは一様に悲鳴をあげたり、特殊魔法部隊のことを非難していた。 愛理の戦いを見ていた家族たちは、泣いて悲鳴をあげていた。 奏では学校にて、愛理の学校に怪物が侵入したことを知り、教室のテレビにて戦いを見て、愛理の腹部が貫かれたことを見て泣き、お姉ちゃんと叫び、その場で気絶をしてしまった。

楓は家のテレビにて中継を見て、愛理の戦いを固唾を飲んで見ていた。 絶光を放つ瞬間や、愛理の叫び声を聞いて、胸が張り裂けそうな思いをしながら、愛しい娘の懸命に戦う姿をみていた。 しかし腹部を刀で貫かれた瞬間、楓は目を見開いて愛理と叫んだ。 そしてその場で崩れて泣き始めてしまった。

正人は仕事中に上司から娘が通っている学校に怪物が侵入したこと聞かされ、休憩室にあるテレビを見ていた。 愛理の戦う姿や、友達を想って避難させたり自身が戦って時間を稼ぐ姿を見て、立派になったと感じていた。 しかし腹部を刀で貫かれた瞬間に正人はテレビ画面を掴んで、愛理と叫んでその場に泣き崩れてしまう。

正人の叫び声を聞いた同僚や上司の二人が駆けつけて、何があったかと聞くと、テレビ画面に映る少女が腹部を貫かれている姿を見て、娘さんかと上司は恐る恐る聞く。 正人はその問いに、はいと答えた。 同僚や上司はなんで声をかけていいかわからないが、正人が再度叫びながらテレビ画面に張り付こうとすると、同僚と上司が二人で正人の両腕を掴んで、一旦落ち着いてと言う。

「落ち着いていられませんよ! 娘が……娘がぁ……」

正人は地面に崩れて、泣いてしまう。 上司は正人の同僚に、飲み物買ってくるから、正人を見ててやってくれと伝えて、一旦休憩室を出た。
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