第67話 旅行への誘い

文字数 1,834文字

「こ、校長先生!? 何でこんな朝早くから私の家にいるんですか!?」

愛理が右腕を引っ張り続けているエレナの頭頂部に軽くチョップを当てながら言うと、星空校長は昨日の戦闘をテレビで見てねと言ってくる。愛理はあの戦闘を見られていたかと頭を抱えると、星空校長は愛理の右腕を掴んだ。

「この腕は切り落とされたはずなのに、そこにいる少女によって再生したということかな?」

星空校長は、愛理の右腕を突っ突いたり押したりしていると、エレナが痛いことしちゃダメと星空校長の腕を掴む。エレナに掴まれた星空校長は、すまないと言い愛理から腕を離す。

「この腕が現実のものか気になって触ってしまった、すまない」

星空校長が謝ると、エレナが許すわと笑顔で返す。星空校長は、愛理に戦闘の後遺症はないか、精神的に大丈夫かと聞いていく。愛理は分からないですと答えた。愛理は必死に戦っていたので精神的には分かりませんと言う。

「そうか。 確かにあの戦闘を見ていると、自身が生き残るよりも守りたいもののために戦うといった気がしたな」

星空校長は愛理の目を真っ直ぐ見て言うと、君はもうすぐ復学する予定だったが、一週間延期すると言う。愛理は何でですかと星空校長を問い詰めると、君には戦闘がない休みが必要だと返された。

「休みですか……確かに色々あって休んでいた気はしませんが……」

愛理のその言葉を星空校長が聞くと、少し温泉などに行って静養してほしいと言う。愛理は温泉かと呟くと、楓が愛理にこれなーんだと言って一枚の小さな紙を見せる。

「何これ?」

愛理が楓の持っている小さな紙を見てみると、温泉宿泊券と書かれていた。「温泉!? しかも有名な孔雀温泉!」

孔雀温泉は、愛理の家から南方に位置する日本で一番有名な温泉地帯である。日本一の泉質が良く、表彰もされている。愛理はいつか行きたいと思っていた孔雀温泉のチケットを今見せられるとは思ってもいなかった。

「いつから行けるの!? いつから!?」

愛理が目を輝かせていると、今から行くわよと楓が言う。愛理は今からなのと驚くと、すぐ準備してくると言う。

「朝ごはんは食べなさい」

楓のその言葉を聞いた愛理は、急いでいちごジャムパンを食べるとすぐに自室に向かった。星空校長は愛理が部屋を出るのを確認すると、楓にもう一週間公欠として休ませるので、今度こそ静養してほしいと言った。

「そうさせてあげたいです。 結局怪物と戦ってしまいましたし、腕がエレナのおかげで治ったといっても、一度切断されてしまいましたから……」

楓が悲しい表情をしていると、エレナが楓に抱き着いて私が愛理を守るから大丈夫だよと笑顔で言う。そのエレナの顔を見た楓は、エレナの頭を優しく撫でながらありがとうと言った。

「エレナがいてくれて良かったわ……愛理を支えてあげてね」

楓のその言葉にエレナは笑顔でうんと言った。その様子を見ていた星空校長は、このエレナという少女は、どういった存在なのだろうと疑いの目を向けていた。どこからきて、どうしてこの家にいるのか、この世界で生まれた存在なのか悩んでいた。

「それでは、とりあえず来週の月曜日から登校ということでお願いします」

星空校長は楓にそう言うと、失礼しましたと言いながら家を出ていった。星空校長が帰ったのを確認した楓は、すぐさま温泉にいく準備をし始める。エレナには物置部屋にある大きな鞄とキャリーケースを持ってくるように指示し、自身は洗い物や洗濯を済ませようとする。

「わかった!」

エレナはそう言い敬礼をすると、すぐに三階に走って行った。後は任せたよと呟くと、楓は早く準備しなきゃと意気込んだ。そして洗い物が終わると、スマートフォンにて仕事に行っている正人にメールをした。その内容は、星空校長の計らいで愛理の登校日が延びたので、奏を休ませて二泊三日で孔雀温泉に行くと打った。また、いない間の洗濯物や洗い物は自分でしてねと追伸で書いていた。

「正人さんにメール送ったし、洗濯物しましょ」

楓は脱衣所に置いてある洗濯機から五人分の洗濯物を取り出して、何回かに分けて三階にあるベランダに干していく。エレナと愛理は着々と準備が終わりつつあるようであり、愛理が楓に奏は行くのと聞いてくると、楓は連れて行くわよと返答した。愛理は奏の部屋に入り、バックに奏の服や化粧ポーチなど、必要と思われる必需品を詰めていく。
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