第70話 温泉地への到着

文字数 1,556文字

「海鮮丼美味しいよ! こんな食べ物があるなんて、嬉しい!」

エレナは目を輝かせながら頬張りながら食べ進めていると、途中で咽てしまう。楓はそんなエレナに机に置いてあるナプキンでエレナの口元を拭いていた。愛理はその二人を見て、もう本当の家族なんだなと実感していた。

「ちゃんと落ち着いて食べなさいよ。 美味しいのは分かるから、もっと味わいなさい」

愛理は自身の海鮮丼を食べ進めながらエレナに注意していた。愛理は海鮮丼美味しいわと言いながら食べ進めると、途中で熱いお茶を飲んだ。

「この途中で飲む熱いお茶美味しいわ……」

愛理はふぅと小さな吐息を漏らしながら海鮮丼を食べることを再開した。愛理は海鮮丼を食べ終えると、エレナと楓も食べ終えていた。それからお茶や水を飲んで一息つくと、駅前に移動することにした。駅前では看板を持って観光ガイドを名乗り出ている人や、孔雀温泉に着たらまず足湯と駅前で宣伝看板が立っていた。愛理は足湯の宣伝を見ると、すぐに駆け出して足湯の側で楓たちを呼んだ。

「足湯だって! 少し入っていこうよ!」

愛理のその言葉を聞いた楓とエレナは、お互いに顔を見合わせて笑った。

「今行くー!」

エレナのその声で、楓とエレナは小走りで足湯の側にいる愛理のもとまで走っていく。愛理のもとに駆け付けたエレナと楓は、足湯に足を浸してぬくぬくとした顔をしている愛理を見た。愛理は暖かいわーととろけた顔をしており、楓は楽しそうで良かったと感動していた。エレナは愛理を真似して足湯に足を浸そうとするが、靴のまま入ろうとしてたので愛理がそれをすかさず止めた。

「ちょっ、靴のまま入っちゃダメだから! 裸足になって入るのよ」

愛理の言葉を聞いたエレナはすぐに裸足になって足を入れた。足を入れたエレナは、足に感じる熱い温泉と周囲にいる人たちの楽しそうな話し声を聞いて足湯って最高だと考えていた。

「これが足湯なんだね! 身体が温まる!」

足をバタつかせ始めたエレナは、楓に落ち着いてゆっくり浸かるのよと言われてバタつかせるのをやめた。愛理はここまで素直に楽しめているエレナをいいなと思いながら見ていると、自身の右足に何かが当たった感じがした。

「愛理の足に私の足をドーン!」

エレナが自身の左足を愛理の右足に軽くぶつけていた。エレナは楽しそうに愛理の足に自身の左足をぶつけていると、愛理はエレナの左足を軽く踏みつけた。

「これでその足は動けまい!」

愛理はエレナの遊びに乗って踏みつけると、エレナはまだよと言って勢いよく左足を引き抜くと、勢いがありすぎて後ろに落ちてしまった。

「エレナ!? 大丈夫!?」

愛理はすぐに足湯から出て、後ろに転がり落ちたエレナを抱き起した。エレナは頭打ったと左手で自身の頭部を摩っていた。

「いたーい……まさか転がり落ちるなんて……」

頭部を摩っていると、楓が腫れていないか見る。

「よかった。 腫れてはいないみたい! 気を付けてよね」

楓がそう言うと、エレナは改めて足湯に足をつける。再度足湯を堪能しているエレナに、そろそろ行くよと愛理が話しかける。

「まだ足入れたばっかなのにぃ!」

エレナが抵抗をすると、旅館の方を堪能した方がいいでしょと言う。その言葉を聞いたエレナは、旅館の方がいいと声を上げた。

「なら、早く行こうね!」

愛理は鞄から小さなタオルを出して、自身の両足を拭くとエレナにも足を出してと言ってエレナの足を拭いた。

「二人とも早く行きましょう」

楓が急かすと、エレナは靴を履かずに歩き始めてしまった。

「ちょっちょっと! 靴は履きなさいよ!」

愛理がそう呼び止めると、エレナは片足ずつ靴を履きながら器用に歩いていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み