第42話 秘めていた気持ち

文字数 1,502文字

愛理は寝ている最中、自身のイビキによって目が開いた。 身体を起こして周囲を見渡すと、そこには楓と奏に葵がいた。 愛理が起きたことを楓が確認をすると、おはようと優しい口調で話しかけられた。 愛理は急に身体に力を入れたので、腹部の激痛を感じて身体を曲げて痛いと小さく呟いていた。

「あ、愛理! 大丈夫!?」

愛理の側に葵がすぐさま駆け寄ってきて、横になろうと言いながら愛理を横にさせた。

「ありがとう、葵」

愛理がちゃん付けで呼ばずに葵の名前を呼ぶと、葵がやっと呼んでくれたと嬉しそうに笑っていた。

「葵が先に愛理って呼んでくれたから、私も呼ぼうと決めたの」

二人して見つめ合って笑っていると、奏が恋人同士かと突っ込みを入れた。

「違うわよ! 何言ってるの!」

奏はそう言われると、笑ってジュース飲もうと言って部屋の冷蔵庫歩いて行った。 奏は緑茶のペットボトルを三本取り出して、自分のと愛理と葵の分をもって愛理のベットの側の椅子に座った。

「はい、お姉ちゃんが好きな緑茶だよ」

そう言われてた渡された緑茶を、愛理はありがとうと言って飲み始めた。 緑茶を一口飲むと、愛理は美味しいわと恍惚の表情をしていた。

「愛理に何かあったら緑茶を渡せば元気になるのかな?」

葵はクスクスと小さく笑っていると、奏がだいたいそうだよと笑いながら言った。 すると、愛理はそんなことないわよと恥ずかしそうにしながら緑茶を飲み進めていた。

「皆がいるから今は平気だけど、帰ったら暇すぎて退屈なのよ」

愛理が葵と奏に愚痴を言うと、二人は一人の方が好き放題できていいじゃないと笑っていた。

「そうだけど、ちょっと寂しくてね」

空笑いをしながらいう愛理の顔を見た葵は、私は他の学校の友達もいるから一人じゃないよと抱き着いた。 愛理は葵を強く抱きしめ返して、怖かったと呟いた。

「怖かった……怖かった! あの人型の怪物と戦った時、すぐ逃げたかったけど、皆を守りたい気持ちの方が勝ってて……戦えるのは私しかいないと思って必死だった! お腹貫かれて燃えるような痛さでも、ここで倒れたら葵や皆が殺されちゃうと思って戦ってた!」

愛理の秘めていた言葉を聞いた葵と奏は、愛理がどんな思いで戦っていたか、一人になることを辛さをあの戦闘で感じていたかを二人は知った。 愛理の気持ちを知った二人は、愛理の顔を一瞬見つめると泣き始めてしまった。 愛理が強がっていたことやそんな思いで戦っていたのかと知れたことが嬉しかったようである。

「お姉ちゃんがそんなことを思って戦っていたんだね……その気持ち凄い嬉しい! でも、これからはそんなに思いつめないで、自分の命を大切にして!」

そう言った奏は、愛理の両手を掴んで自分を大切にしてと再度言った。 葵は、愛理にもう無理させないように私も強くなると愛理に話している。

「愛理だけにもう苦労させない! 私も隣で戦えるようにする!」

葵は強く愛理に抱き着くと、苦しいよと愛理が葵の背中を叩いていた。 そんな三人の様子を正人たちは微笑ましそうに見ていると、奏がお母さんたちがいるんだったと思い出した。

「愛理は良いお友達を持ったわね。 嬉しいわ……」

突然楓に話しかけられた愛理は、ハッとした表情になり、ママもいたんだったと顔をゆでだこの様に赤くしていた。

「俺たちもいるぞ」

その言葉と共に部屋に入ってきた正人を見た愛理は、パパもなのと布団を頭から被って悶えていた。

「俺以外にも医師の人もいるけどな」

追い打ちをかけた正人に、愛理は自身の側にある枕を投げつけた。
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