第33話 想いの奇跡

文字数 1,542文字

人型の怪人は身体を地面に刺した刀で支えながら、自身の腹部を貫通している槍を見る。 貫かれた槍を見ると、身体を回転させて遠心力で愛理を振りほどこうとした。

「こんな攻撃くらいで、振り落とされたりなんか!」

愛理は槍の柄を掴んで踏ん張っていたが、勢いが増すにつれて握力の限界がきたのか振り落とされてしまった。 愛理は悲鳴を上げながら、地面と擦れながら気に衝突をして止まった。

「こんなヤリにツラヌかれるトハ……」

刀で槍の先端を押して、自身の身体から槍を抜く。 人型の怪人は、愛理に走って距離を詰めて、右腕の刀で切りかかろうとした。

「ライトシールド!」

愛理はその攻撃をライトシールドで辛うじて防ぐことが出来た。 しかし、ライトシールドに人型の怪人は蹴りを当てて、ライトシールドを上に弾いた。 弾かれたライトシールドは掻き消えるように消失し、愛理は防御手段を失ってしまう。 すぐにライトシールドを発現させればいいのだが、それすらも間に合わない距離に人型の怪人の刀が迫っていた。

愛理は人型の怪人の両腕の刀で身体をクロスに切られてしまう。 愛理は血を吐きながら地面に力なく倒れると、力が入らない右手を握り締めようとしていた。

「まだ……まだ負けない……私は……」

顔を目の前にいる人型の怪人に向けると、愛理を嘲るように笑っているように見えた。 人型の怪人は愛理の顔を見ると、右足で愛理の脇腹を蹴り始めた。

「コレデ死ね! ハヤク死ぬノダ!」

何度も愛理の脇腹を蹴る人型の怪人は、笑いながら蹴り続けている。 愛理は何度も蹴られると、血を時折吐き出しながら痛みに耐えていた。

「ぐぅ……心を折られるものか!」

愛理は脇腹を蹴る人型の怪人の勢いを利用して、身体を転がせた。 そして、距離を取ると、ふらつきながら立ち上がる。

「それでも、私は戦う!」

魔力を振り絞ってライトソードとライトシールドを発現させると、愛理は声を上げて人型の怪人に向かっていった。

「ソンな力がナイコウゲキなど」

右腕の刀で愛理の攻撃をやすやすと防ぐと、もう死ぬがいいと片言で人型の怪人は愛理に言う。 人型の怪人の右腕の刀で、愛理は腹部を貫かれてしまう。 愛理は血を吐き出しながら、地面に力なく倒れてしまった。 その様子を見ていた生徒や教師、テレビ画面から見ていた日本全国の人たちは、悲鳴をあげていた。

生徒や教師たちは愛理の名前を叫び、助けに行きたいが、殺される恐怖から近づく勇気が湧かない自身を攻め、視聴者たちは、怪物の強さに怯えていたが、愛理の戦う姿を見て恐怖に打ち勝ち、戦う姿に涙を流していた。 葵は力なく倒れる愛理に近づこうとするも、特殊魔法部隊の隊員に力ずくで止められてしまう。

「なんで止めるんですか! 愛理ちゃんが死にそうなんですよ!」

泣きながら叫ぶ葵に隊員の男性が、君まで倒れたら、あの女の子が戦った意味がなくなるじゃないかと顔を強張らせて言う。

「愛理ちゃんは私がやられたから、怪我を押してまで助けてくれてたのに……私はそれを無下にしようとしてる……」

葵は愛理の横に行くのをやめて、愛理頑張ってと叫ぶ。 愛理はその葵の声を聞いて、葵の声が聞こえると呟いていた。

「葵ちゃんが私のことを呼んでる……頑張ってって……叫んでる……」

愛理は激痛が走っている腹部を左手で抑えながら、静かに立ち上がる。 立ち上がった愛理を見た周囲の人たちとテレビ画面を見ている人たちは歓声をあげていた。

「私は……まだ……戦える……私がみんなを……守るんだ!」

その叫びと共に愛理の身体が光り輝き、眩い光と共に白色の透明度が高い無垢な白色にも見える一本の長剣が現れた。
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