第60話 力の差

文字数 1,954文字

奏が避難したのを確認した愛理は、妹を守るために目の前の怪物を倒す覚悟をした。 今までは特殊魔法部隊の人が来るまで持ち堪えようとしていた。 しかし、この場所に奏がいるとしたら話は別であった。

「奏を守らないと! 奏を守るんだ!」

愛理は甲冑の怪物を睨み、ライトシールドとライトソードを持つ手に力を入れた。 愛理はライトシールドで甲冑の怪物に体当たりをし、身体を捻って甲冑の怪物の背後に移動し、首筋を切り裂く。

甲冑の怪物は呻き声をあげ、刀を水平に振って愛理に攻撃をした。 愛理はその攻撃をライトシールドで防ぐと、ライトスピードを発動して甲冑の怪物の前に瞬時に移動してライトシールドで体当たりをする。

愛理が体当たりをすると甲冑の怪物は態勢を崩すも、すぐに立て直して愛理に切りかかる。 愛理はライトスピードを駆使して速度を上げて攻撃をしてくる甲冑の怪物の速度にギリギリ対応し、その合間を縫ってライトソードで切りかかっていた。

愛理の攻撃はさほど効果がないように思えるが、甲冑の隙間を攻撃しているので効いてはいるようである。 しかし、決定打になっていないのでそこが愛理が攻撃しても辛い点であった。

「埒が明かない……だとしたら!」

愛理は刀を振るってくる甲冑の怪物と攻撃を防ぎながら高スピードで切り合っていると、距離を詰めてライトシールドを甲冑の怪物に当てた。 甲冑の怪物はまた体当たりかと思いバックステップで後ろへ下がると、愛理はライトシールドとライトソードを解除し、絶光と叫び発動をした。絶光を発動した愛理は片手ではなく、両手から放っている。片手では怪物に効果がないとシンとの戦いで誘ったので、目の前の甲冑の怪物には用心をしようと決めていたからである。

「この両手での絶光なら! 目の前の怪物にも効果が!」

愛理が叫びながら絶光を放ち続けると、甲冑の怪物は一歩後ろに下がると両足に力を込めて少しずつ前方に進んでくる。 愛理は目を見開いて嘘でしょと言いながら、絶光を放つ手に力を込めていく。

「また絶光が効かないの!? 私の今一番出せる強い魔法なのに!」

愛理が顔を引きつらせながら、強い魔法をもっと強い魔法を出せたらと何度も呟いていた。 そして愛理は避難している奏の方向を向くと、そこにいる奏はお姉ちゃん頑張ってと叫んでいた。

愛理は奏の応援の言葉を聞くと、お姉ちゃんなんだから妹のために頑張らないとねと呟き数秒目を閉じると、愛理は目を見開いて絶光を放つのをやめた。 そして愛理はライトソードを発動させて甲冑の怪物と鍔ぜり合いをしたり、何度も刀とライトソードを当てあう。

「この! この! この! 私が守らないといけないのに!」

愛理は歯を喰いしばって何度も甲冑の怪物に攻撃をしていく。 愛理が甲冑の怪物と対峙してから数十分が経過すると、特殊魔法部隊が到着した。 愛理は特殊魔法部隊が空から降ってきたところを見ると、安堵の表情をする。

「良く持ち堪えた! 後は私たちに任せてくれ!」

愛理に話しかけた特殊魔法部隊の男性隊員は、そう言いながら愛理と甲冑の怪物の間に入り、腰に帯刀していた刀を抜刀して甲冑の怪物に切りかかる。刀を抜刀した男性は、愛理にこの場から離れろと言って甲冑の怪物と切り合い続ける。愛理の時とは違い、甲冑の怪物や目の前にいる特殊魔法部隊の男性の切り合うスピードが違う次元であった。

愛理は奏の側に行くと、奏がお姉ちゃんと言って抱き着いてくる感触を感じていた。 愛理は奏に心配かけてごめんねと言うと、抱き返す。 すると、側にいる若い男性が、ネットニュースでこの怪物のことが流れていると言い、側にマスコミもいるみたいだと言っていた。

「マスコミがいる? そんな人影はどこにも……」

愛理が周囲を見渡してみると、近くにある五階建てのマンションの屋上にカメラを構えている二人組の男女が見えた。 愛理はあの二人かと思うと、奏が心配でこの場から動けないので放っておくことにした。

「早く二人でこの場から逃げようよ! またお姉ちゃんが怪我をしちゃう!」

奏のその言葉を聞いて、すぐに動きたかったが特殊魔法部隊の人が戦っているから支援して怪物を倒したい気持ちがあったので、逃げることは考えていなかった。

「遅れました! 私が皆様を誘導しますので、こちらに避難してください!」

愛理が戦おうと決めると、愛理の後方から車に乗って一人の女性の特殊魔法部隊員が到着した。 その女性隊員は、愛理たち避難者にこの車に乗ってここから逃げてくださいと言う。

「やったねお姉ちゃん! これで助かるよ!」

奏がそう言い愛理を引っ張るも、愛理はその場から一歩も動こうとはしなかった。
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