序② 近代音楽にしたカール・オルフ

文字数 1,558文字

前回は修道院で古い写本が発見されたって話だったな
その後すぐに音楽が作られたの?
そういうわけじゃないの。

時代はさらに100年ぐらい下がります。20世紀初頭です。

初めまして。僕はカール・オルフ。

ミュンヘンの軍人の家系に生まれたんだけど、とにかく音楽が好きで、音楽家になっちゃった

今は学校で音楽教師をしているよ。リトミックなど、教育用音楽もたくさん作ってるんだ
出た。この人がカール・オルフか
意外と真面目そうな人だな……

「カルミナ・ブラーナ」といえば、この人なんだよね?

うん。この人のお陰で、数ある写本の一つ「カルミナ・ブラーナ」は、突出して有名になったんだ。

音楽はネウマ譜による古い旋律そのままではなくて、ほとんど現代音楽に作り替えてるんだけど、これがインパクト絶大だったから

ヴュルツブルクの古書店のカタログを偶然入手したオルフ。

一冊の本の題名に「魔術的な力」で惹きつけられます。

その本のタイトルこそ「カルミナ・ブラーナ」。

3.50ライヒスマルクのお買い得価格だったんだ

運命に導かれるようにオルフはその本を取り寄せ、読みふけり、そして衝撃を受けるのです。
……鳥肌モノだ
この本自体が非常に古い。読む人はまれだろう。修道院での写本の発見からすでに100年、詩歌が書かれた時代からはもう1000年近い年月が流れてる。

なのに、こんなに内容に共感できるなんて!

エロい詩が好きだったんだな?
反体制的で、猥雑。でもそうだからこそ、オルフも心をつかまれたのかもね。

やっぱり、誰が書いた詩なのかは気になるなあ~

前回もお話しした通り、作者が誰なのかは不明だよ。

またほとんどの詩歌は、もっと古い時代からの伝承をかき集めたものみたい。つまり誰か偉い人の命令で作られたと考えられるの

じゃ、誰が「カルミナ・ブラーナ」を作らせたのかは分かってるの?

ある程度はね。教養人の言語であるラテン語を用いているし、写本の製作にはかなりの費用がかかったことなどを考え合わせると、在俗の高位聖職者が編さんに関わったと見るのが妥当じゃないかな? 個人名までは分からないけど

聖職者なのに、エロい写本を作らせたのか?
聖職者って言っても、中世においてはお金持ちの権力者だった人もいるし、そういう人はたぶん露骨な性描写にも大らかだったんじゃないかな。


そして詩の語法、写本の作成法などから考えると、時代と地域も絞られるんだ

というわけで現在、オーストリアのゼッカウ司教の宮廷を「カルミナ・ブラーナ」誕生の地とする説が有力だそうでーす

約300の詩歌の中から、オルフは24編を選び、曲を付けました。

これが世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」です。

よし、できた……!

これこそ僕の最高傑作だ。みんな、今までの僕の作品は、忘れてくれ。「カルミナ・ブラーナ」を聞いて欲しいんだ

本人が予言した通りでした。1937年にフランクフルトで上演されると、この曲はたちまち人気を博し、オルフは一躍スターになったのです。
運命の女神(フォルトゥーナ)が僕を愛してくれたんだ!
オルフの「カルミナ・ブラーナ」は「初春に」「酒場で」「愛の宮廷」の3部から成り、それを序とエピローグが挟んでいます。
副題もつけてみたよ!

「楽器群と魔術的な場面を伴って歌われる、独唱と合唱のための世俗的歌曲」というんだ。かっこいいだろ?

この曲、合唱団もオーケストラも大編成で、爆発するような迫力があります。ソプラノ、テノール、バリトンの独唱も、それぞれ情緒たっぷりで素敵です。

演奏会形式で発表されることがほとんどですが、歌劇場で上演される時はバレエを伴っていることもありますよ

というわけで、次回からは楽曲紹介に移りま~す。

オペラのような、全体を貫く物語はありませんが、詩歌の内容をチャットノベルでご紹介。ぜひお付き合いくださいませ!

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