24曲 ようこそ、この上なく美しい方よ

文字数 1,315文字

いきなりですが、ここで部が切り替わります。

「ブランツィフロールよ、ヘレナよ」というタイトルです。

え、ブランツィフロールって何?

人の名前だね。

中世のロマンス説話「フローリスとブランツィフロール」に出てくるの。

絶世の美女なんだって。名前は「白い花」という意味だよ

ちなみにフランス語の「ブランチフルール」がラテン語化したものです。
じゃ、フローリスっていうのも人の名前?
そう!

フローリスはスペイン人男性の名前だよ。当時のスペインはイスラムの支配下にあったので、キリスト教徒のブランツィフロールとは異教徒同士。ブランツィフロールが敵に奪われるなど、二人の恋愛には苦難が伴いますが、最終的にはフローリスが助け出してハッピーエンドに♡

中世にはこんな物語が人気だったんだね

プリンセス救出劇の元祖って感じ?
タイトルに出てくるもう一人の名前は、ヘレナだね。

こっちは、何となく聞いたことあるような……

ヘレナは古代ギリシャ神話に出てくる、スパルタの王妃。
パリスがヴィーナスの命令でヘレナを奪い取り、その結果としてトロイア戦争が起こってしまうという有名なお話があります(『イーリアス』他)。やっぱり絶世の美女です

参考:1956年の映画「トロイのヘレン」ポスター
そういえば「世界三大美女」って言われる女性たちがいるよね。

クレオパトラと、楊貴妃と、それからもう一人がトロイのヘレンじゃなかった?

え、違うだろー。

小野小町だろー

最後の一名は、国によって誰を入れるかが違うみたい。

ヘレナは神話上の人物だけど、あえて彼女を入れる人は、「その美しさで国を滅ぼした」という観点で選んでいるようです

とにかくどっちも美女の名前なんだ。

単純に並べるなんて、●●の一つ覚えみたいだな

美女二人を冠したこの曲、パワフルで壮大、しかもすごくきれいだよ。

これがラストの曲と言われても、全く不自然ではありません。

さっそく聴いてみましょう!

グロッケンシュピール(何と3台!)のきらめくような甲高い音とともに、大合唱がフォルテッシモで始まります。


歌詞は、ただただ美しい人をたたえる内容です。

ようこそ、この上なく美しいお方よ

価値ある宝石よ

ようこそ、おとめの誉れよ

栄光のおとめよ

ようこそ、世界を照らす方よ

ようこそ、世界のバラよ

ブランツィフロールよ、ヘレナよ

気高いヴィーナスよ

音楽が最高潮になったところで、不安定なドミナント(五度の属音)で曲は急に終わってしまいます。このため聴いている方は、音楽が途中で終わったような感覚に囚われます。


ですがこの手法が効果的。緊張感を保ったまま、一気に次の曲へとなだれ込んでいくのです。

「ようこそ、この上なく美しい方よ」は55.20~。

単独動画がなく、お手数おかけしますが、ぜひ聴いてみてください。

グロッケンの音がキラキラだな
光の中に、さらに輝く美女がいる、という感じだね
やっぱり女性は美しくなければ駄目なのね…

と言いたくなりますが、そんなひがみ根性は捨てましょう(笑)。


これは絶望の縁にある一人の男性が見た、一種の理想郷かもしれないからです

ん? どういうこと
たぶん絶望で死にかけているような時にこそ、人は最高に美しいものを見たいんだよ。

次の曲を聴けば分かりま〜す!

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