第10話
文字数 297文字
父の顔は存外、変わっていなかった。
私たち家族にとって悪虐の限りを尽くし
記憶の中では、顔の中央が黒く抜け落ちていたため
拍子抜けにすら感じた。
元の記憶の顔と再会する。
もう、他人だ。
そう思うと、鼻奥が騒ぎ出した。
理由がわからなかった。
父との別れが悲しいなどとは一切思っていなかった。
憎しみや怒りもないではなかったが、
母とこの地を去る喜びの方が大きかったはずだ。
離婚などという形式ばった切れ目とは別に
音が聞こえるほど、父との関係が終わる瞬間を目の当たりにした。
それが少し痛かったのだ。
そう思うことにしよう。
「久しぶりだな。」
「どうだろうね。」
「怒っているか。」
「どうだろうね。」
その先は覚えていない。
私たち家族にとって悪虐の限りを尽くし
記憶の中では、顔の中央が黒く抜け落ちていたため
拍子抜けにすら感じた。
元の記憶の顔と再会する。
もう、他人だ。
そう思うと、鼻奥が騒ぎ出した。
理由がわからなかった。
父との別れが悲しいなどとは一切思っていなかった。
憎しみや怒りもないではなかったが、
母とこの地を去る喜びの方が大きかったはずだ。
離婚などという形式ばった切れ目とは別に
音が聞こえるほど、父との関係が終わる瞬間を目の当たりにした。
それが少し痛かったのだ。
そう思うことにしよう。
「久しぶりだな。」
「どうだろうね。」
「怒っているか。」
「どうだろうね。」
その先は覚えていない。