新しい物語が紡がれます。最初は静かに、激しく展開します!

文字数 855文字

第一話 聖地巡礼がはじまる
 仙波清人は埼玉県〇市の「白鷺神社」の神主である。神社は地区を西から東へと流れる「不老川」の袂に位置する。この神社を一躍有名にしたのはスタジオジブリ制作の長編アニメ「千と千尋の神隠し」。
 「白鷺神社」のご祭神が登場したハク(白龍)という少年のモチーフではないかと噂がたったからだ。ハクは「ニギハヤヒコハクヌシ」(コハクヌシは創作)でありコハク川の守り主だが都市開発によって川は汚されもはや信仰の対象ではなくなった。そのため己を見失い魔女の手先となる不運な少年として描かれた。
 川の名前は違えど祭神は同じ「ニギハヤヒ(饒速日)」。チョイと歴史に煩い連中が(アニメのモデル)と推察した。なにせ「トトロの森」のすぐ近くだし。すぐに聖地巡礼が始まる。
 神主養成校の〇大學に在学中のこと。清人も「夏帆」似の彼女とアニメを見た。
「あれ、ホントだねぇ。清人っとこ(神社)じゃない? 」
 彼女も直感したようだ。「不老川」と「コハク川」。「ニギハヤヒ」と「ニギハヤヒコハクヌシ」。疑いようがない。おまけに「ニギハヤヒ」は水神でもある。
 それに「不老川」というヤツは「コハク川」と一緒で、昭和五十年代に全国の(汚い河川第一位)に連続三年も選ばれている。不名誉な川。これもアニメの「コハク川」と似通っていた。
 自分の神社のご祭神が有名になるのはいいことだし「ハク」にあやかって箔がついたような気分にもなった。このあと大学での清人のアダ名も「ハク」となった。

「ハクさんが今日は運転手ね」
 振り向くと玄関先で妻が車のキーをブラブラさせている。そう一緒に映画を観た彼女が妻の陽菜。育ての親の祖父は三年前に没し今は清人が「白鷺神社」の代表。両親は小学生、高校生の時と相次いで病死している。陽菜とは五年前に結婚した。 
 彼女は理系の大学院卒業後、物理の教師として私立高校の教諭をしていた。子供が出来ないこともあり陽菜はまだ仕事を続けている。旗日の今日は神社に行事がないので近くのアウトレットパークに買い物に出掛ける。
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